漆黒の森 (創元推理文庫)
漆黒の森 (創元推理文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
一時期、シーラッハの著作が「読書メーター」を騒がせたものの、ドイツのミステリーは依然として日本ではマイナーなままである。そこにドイツ推理作家協会賞新人賞受賞を引っ提げて華々しく登場したのが、本書のペトラ・ブッシュであった。プロットの進行は警察小説なのだが、烏男の伝承を持つシュヴァルツ・バルトの隠れ里のような村に物語の舞台を置き、猟奇的な世界を現出させた点が見所と言えば見所である。さらにはサヴァン症候群を持つブルーノを登場させたり、死体のフリーズ・ドライといった手法を絡ませたりと随分と盛り沢山な印象である。
2021/08/06
HANA
独逸の閉じられた田舎が舞台という事で横溝的世界観を想像していたが、田舎の因習とかそういうのはあまり目立たなかった。一応そういうのにも眼目は置かれているのだが、中心となるのはあくまで人間関係の方。一応主人公はヒーローとヒロイン二人という事になるのだろうけど、ヒロインの事件への絡め方が無理矢理すぎるような気がする。警察もそんなに捜査状況を素人には話さないだろうと思うし、その辺の無理があちこち目立つ。明かされる動機も最初の動機自体が理解し難いし。やっぱりあの田舎独特の陰惨な湿気というのは表現するの難しいのかな。
2015/04/01
星落秋風五丈原
ドイツミステリー。恋知り染めし(結構年齢はいってるんですけど!)警部がかわいいんですけど。
2019/02/26
barabara
中盤までは面白くてガンガン読み進んだが、段々話の軸になる警部と編集者の間の悪い絡みや、陰鬱な村社会を彷彿とさせる確固たるものが見えず、話にまとまりがないような残念な出来だった。皆が少しずつ変わっている人ばかりと思えばいいのかもしれないが…。あえてこの環境に仕立てる意味がなかった感じ。
2015/03/21
miri
ドイツ推理作家協会賞新人賞受賞作。ドイツの小村で起こる殺人事件、迷信深い土地と余所者を拒む村人、外部からやってきた刑事と編集者。キーワードは凡庸だが、殺人を犯す理由に説得力がある。閉鎖的な集団の同調圧力と子供時代を共有する人々の道が違ってしまう悲しさは大人なら理解できるところと思う。恋に狼狽える刑事が、その動揺を相手のせいにして苛ついているところは笑ってしまった。全体的にエピソードを盛りすぎで、一つ一つが掘り下げ不足という点はあるが、デビュー作品でこれほど面白いなら次回作も読みたい。
2019/08/02
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