仏陀の鏡への道 (創元推理文庫 M ウ 7-2)
仏陀の鏡への道 (創元推理文庫 M ウ 7-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
若き日のドン・ウィンズロウの作品。初々しい探偵ニール・ケアリーのシリーズ第2弾。今度はスケールをさらに大きく構えて、香港から四川省の奥地まで。物語中盤の九龍寨城の場面が構成上の大きな転換点になっている。それまでの前半部は、いささか調子に乗り過ぎではというくらいに徹底した「動」。後半は文革を体験的に描き、こちらは「静」。最後の峨眉山で再び「動」に転じ、最後は静かに結ぶといった構成。この間、リ・ランの動向は矛盾だらけに見えるが、最後に種明かしがなされる。このあたりは、良くも悪しくも若書き感が見られるところ。
2024/05/16
ゆいまある
ドン・ウィンズロウ×東江一紀というマシンガントークが最高に楽しいのは序盤まで。ヨークシャーで隠居生活を送っていたニール。美女に誘惑された博士を正気に戻らせ、連れ戻す任務を負い、サンフランシスコから香港。九龍で死にかけ阿片中毒になる場面が切なく辛い。次は成都。今の中国ではなく、文革直後の混乱の中国。三体の過去シーンのよう。ほんの数十年前は中国こんな秘境だったのか。英語喋っただけで殺されるとか。当時の四川省観光案内みたいな感じで、非常に丁寧に書いてると思うが長い。そしてニール、帰宅できないまま終わる。
2023/01/11
ずっきん
【ドンウィンズロウ再読祭】の時にすっ飛ばしたままだった。30年前の作品だよなあ、これ。文革を絡めた舞台の奥行きと骨太さ。滑走するストーリー。エロい筆致。いやー、すごいわドン様。美しいわドン様。再読すると『犬の力』への道ってのがよくわかる。翻訳は6年の遅れを取ったけど『ワイルドスワン』と同年の発表だったんだな。日本でも同時期の発表だったらもっと爆発してただろうか。思い出せば『ストリートキッズ』で衝撃を、続く本作で完膚なきまでのKOを喰らったんだった。シリーズでの読みごたえトップはやっぱ『仏陀』で決まり金玉!
2023/08/27
honyomuhito
小さい頃にインディー・ジョーンズシリーズを見ていて、なぜ彼は作品が変わるたびに恋人が変わるのだろうと憤慨したものである。本作でニール・ケアリーは猛烈な恋をする。ニール・ケアリーお前もか!つい、そう思ってしまった。同窓生だったあの子のことはどうするんだ。しかしニールの必死の追跡・逃亡はいっそ死に場所を探すための軌跡のようでもある。大切だったけれど守れなかった者たちへの懺悔のようにニールは奔走する。自分が愛されなくても、今度こそは大切なものを守りたい。多少惚れっぽくてもいいから元気になってまた戻ってきなよ!
2020/09/15
タツ フカガワ
1977年、24歳の探偵ニールの任務は人探し。その人物ペンドルトンは画期的な植物の成長促進剤を開発した生化学者で、中国の美人画家に心を奪われて仕事場に戻ってこないという。サンフランシスコで探し当てたニールだが、自身も美人画家イ・ランに恋してしまう。軽妙なユーモアとアイロニーを交えた語り口で一気に引き込まれた物語はサンフランシスコから香港、中国四川省へと舞台は変わり、文化大革命のその後を題材にしたエスピオナージの展開、興味深く読みました。
2024/05/04
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