惜別の賦 (創元推理文庫 M コ 6-3)
惜別の賦 (創元推理文庫 M コ 6-3) / 感想・レビュー
遥かなる想い
天性のストーリーテラーと言われるゴダートの本を初めて読んだ本。とにかく面白かったというのが実感。突然幸せな日々に闖入してきた少年時代の親友とその自殺。そこから喚起された忘れかけていた過去。過去への旅とそこからやがて浮かび上がってくる真実、というプロットはトマス・H・クックなどの本と似ているが決定的な違いは、「錯綜する過去の物語りを読者に飽きさせることなく、解き明かしていく」という 筆力だろうか。 単なる謎解きではなく、主人公の 失われたものが哀しい。
2010/06/06
アラム
前半で脱落しかねないが、後半からはなかなか味わい深い。というか前半の記憶がない...。過去の事件を解きほぐすうちにチラつく謎の女、家族の陰惨さ、ちょっと意外な結末。ミステリーではなく、ストーリーで読ませる小説だろうか。
2020/01/24
白玉あずき
「リオノーラ」が素晴らしかったのでゴダードをぽつぽつ買い揃え、その後すっかり忘れておりました。細かな描写、複雑なプロットで最初は馴染みにくかったのですが、徐々に面白くなりました。遠い過去の秘密が現実に追いついてくる、その構成が多分ゴダードのお好みなのでしょう。哀切の情がしみじみ切なく、二転三転する状況が最後まで読者を引っ張ります。全き善人は登場せず、感情移入できるキャラクターもいないにもかかわらず、なかなか面白うございました。不幸な被害者が生きているうちに、正義がなされなかったという現実が後を引いて残念。
2014/01/03
向う岸
☆3 読み進めるにつれ話は二転三転し、謎の女に翻弄されたり遺産をめぐってのコンゲームが繰り広げられたり、次々と一族の闇が明かされたりと驚かされる。莫大な遺産を残して殺された大叔父の死の真相や如何に。一族の骨肉の争いは横溝正史っぽい。
2016/06/10
Hotspur
あまり賞に縁のないように見える著者の10作目だが、本作は1999年エドガー賞長篇賞にノミネートされた。三代にわたる二つの(最終的には三つの)家系を頭に入れるというハードルを越えると俄然面白くなる。欠点の多い主人公が、現在に大きな影を伸ばす過去を探求し、嘘やごまかしをくぐり抜けて最後に根性を見せるという常のプロットだが、今作ではそれが(複雑ではあるものの)比較的コンパクトでタイト、現在と過去を速いテンポで行き来する話法と相俟って緊張感やスピード感が中だるみなく最後まで維持されている。結末も含めて堪能できる。
2022/05/13
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