他人の城/憎悪のかたち: 日本ハードボイルド全集3 (創元推理文庫 M ん 11-3)
他人の城/憎悪のかたち: 日本ハードボイルド全集3 (創元推理文庫 M ん 11-3) / 感想・レビュー
本木英朗
〈日本ハードボイルド全集3 河野典生〉である。失踪、復讐、逃亡――。法の外に浮かぶ人間の輪郭。ハードボイルドの正統に挑んだ直木賞候補作の傑作長編と初期を代表する中短編5編を収録している。どれもこれも面白かったなあ。さすがは作者である。よかったです。
2022/05/17
くさてる
コンセプトが魅力的で、刊行を楽しみにしている全集です。河野典生は初読だけど、海外作家の作品に負けない雰囲気と深みがあって、なおかつ舞台が日本である面白さが重なって面白く読んだ。ただ、日本であるだけに時代性も感じてしまうのも事実。あと、個人的な感覚ではあるけれど、女性の描き方が類型的で感情移入しにくかったかも。けれど、時代的な制約に負けない面白さがある作品集だと思います。
2022/04/30
まぶぜたろう
長編「他人の城」はロス・マクの見事な60年代新宿アングラ・バージョン。風俗描写が興味深く、プロットも複雑、探偵が深く事件に介入し、アーチャーのように「紙のように薄い」だけではないのが素晴らしい。まさに汚れた街を孤高の騎士が往くのだ。■他の中短編はこれはハードボイルドにあたるのか、チンピラたちの青春劇。まさに日活ヌーヴェルバーグ&大和屋竺で、もう少し気取れば矢作俊彦。蔵原惟繕が2作も映画化しているのだから当然なんだけど。とはいえ中短編は、純文学になりきれないザッツ中間小説といった感じで、ちょっと古いすかね。
2022/08/10
Schunag
前作『殺意という名の家畜』が構造的に若干ハードボイルドと異質であり、三作目以降は『迷彩の森』『さらば、わが暗黒の日々』とハードボイルドの定型から外れてゆくので、『他人の城』がこの著者によるいわゆるハードボイルド・ミステリの最高作かと思う。文体、悲劇性、時代性(とくに「軍人の娘」というワードの効き方)等ほぼ完璧で、だからこそ中盤のやくざ者ヤマヨシとの対話のパートが妙に冗長で質感も浪花節風なのが不思議である。同じ素材を別に仕立てたような短編「ガラスの街」が収録されているのも楽しい。
2022/06/09
あいあい
このシリーズも四冊目。今回も楽しませてもらった。表題作はまさしく正統派ハードボイルド。1960年代にこんな文体があったのね。
2022/06/08
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