オイディプス症候群 (創元推理文庫)
オイディプス症候群 (創元推理文庫) / 感想・レビュー
geshi
頁数でも内容的にもハードな読書だった。『そして誰もいなくなった』をオマージュしているけど、島に集まって人が死ぬまでにクリスティーなら1冊終わるぞ。哲学談義は理解が追い付かず流し読みになってしまい、この作品をどこまで読み込めたのか分からん。真相の基本構造はシンプルなものだが難解や装飾がそこに目を向けさせないし、フーダニットの手掛かりも丁寧と本格ミステリの本道は踏み外していない。ラストのクローズドサークルものの逆転は探偵役が矢吹駆じゃないと成立しないよね。
2023/02/25
モルワイデ鮒
謎の病と館に集められた十人。孤島と密室の内と外。人が人を殺すことは許されているのか。『愛の三範疇』『ならびみ、むきあい、わたしみ』『見る、見られる、見返す』矢吹カケル半分ぐらい何言ってるかわからない。折り目正しい孤島の館ミステリに哲学講義とギリシア神話の装飾てんこ盛りで千ページ弱。両手に持てる情報量は早々に限界。出てくる仮説を次々鵜呑みにして腹一杯。しかしぐったりして開いた終章で突如霧が晴れる。カケルのイメージも激変、は言い過ぎちょい変。ラストも印象的。真相を忘れないうちに再読したいが体力が。
2024/08/30
marty@もぶおん学
創元推理文庫版刊行を機に再読。孤島に閉じ込められた人物たちが次々と殺されていくというミステリとしては王道の展開だが、ミノタウロス島というエーゲ海に浮かぶ孤島が舞台ということで雰囲気は満点。ダジールという名のミシェル・フーコーはじめ、いずれも思想に一家言持つ登場人物ばかりでこのシリーズならではの哲学論議が交わされ、さらにギリシア神話の蘊蓄や、表題の謎のウイルス感染症を巡る不穏な動きありで、物語に重厚感を与えている。
2023/02/12
花嵐
★★★★★ 矢吹駆シリーズ第五弾。いわゆる孤島もの。長編なので途中で中弛みするかもしれないと思っていたが、そんな事態にはならず最初から最後まで物語のスピード感は維持され止まらなかった。きっとその速度感から犯人も犯行を止められなかったんじゃないか、と錯覚してしまいそうになるぐらいには。こういう結末には陰惨な口笛が似合うような気がする。それにしても物語の合間に挟まれた探偵小説論の探偵イコール犯人、もしくは犯人に匹敵しうるという可能性の話は結構面白かったなぁ。そこらへんの観念の話は直感的にはわかる気がする。
2024/03/07
なつのおすすめあにめ
なにせ『哲学者の密室』を創元推理文庫で読んだのが(読書メーターの記録によれば)2012年の三月らしく、今ではもう読むの大変だったなくらいしか覚えていないのですが、この『オイディプス症候群』は『哲学者の密室』の「密室」を「クローズドサークル」に置き換えてあって、前作の「特権的な死の夢想の封じ込め」は「出るために作られた檻、第三項が生じるように引かれた線」にパワーアップ(?)するので、なんとなく思い出しながら読める。終わり方は今まで読んだシリーズの中で一番好きかもしれない。『吸血鬼と精神分析』は光文社文庫で…
2023/12/10
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