金閣寺は燃えているか?: 文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫 M く 3-6)
金閣寺は燃えているか?: 文豪たちの怪しい宴 (創元推理文庫 M く 3-6) / 感想・レビュー
パトラッシュ
前作『文豪たちの怪しい宴』に比べ、奇想さが落ちたような。唯一、表題作になった第四話で三島由紀夫が古く黒ずんだ金閣を権力の象徴とみなし、犯人の自決失敗を昭和天皇が戦争責任を取らなかったことを許せなかったと暗喩しているのは同意見だが、それ以外は『蒲団』をラノベ扱いするなど牽強付会に過ぎて読者を納得させるものに欠ける。いずれも作家たちが作品に込めた真実を探っているが、さすがに国境の長いトンネルや書店のレモンが世に認められぬ鬱屈を示すものとは思えない。ミステリで現実に足のついた意外さを描くのは難しいと再認識する。
2021/12/11
へくとぱすかる
速く読めておもしろい。テーマにされた小説を読んでいなくても楽しめるミステリ。しかしまぁ「雪国」ぐらいは読み終わっておいた方が、もっとよかったかもしれない。冒頭数ページ程度でそのまま「読んでる」状態ですから、お恥ずかしいものです。第2話の田山花袋の話ですが、最初からそういう線をねらっていたのなら、すごい先見の明があるというか、本当に元祖かも。「檸檬」だけは、かつて遠い昔に読みました。なにしろ短い。そうかそういう読み方もできるのか、と感心。文学というのは深読みすれば、実におもしろいものだと感じたしだいです。
2021/11/25
うののささら
ふざけててなかなかおもしろかった。日本文学界第一の重鎮曽根崎先生とかわいいバーテンダーミサキとの文学談義。会話に入れなくても隣で聞いていたいな。島村の陰鬱な心情と駒子の抑えた愛情をリアルに描写する川端康成の雪国。私小説の先駆け赤裸々な内面を大胆に告白する谷崎潤一郎の蒲団。檸檬は人生の重さで手に乗るほど軽い梶井喜次郎の檸檬。美しい文章と豊かな表現力で美の追求する天才三島由紀夫の金閣寺。どれも好きな作品だな。特に三島由紀夫は青春時代のめり込んじゃったな。モチーフなテーマを象徴している。良かったです。
2021/12/16
sin
“雪国”では作品と云う実在と創作と云う非実在をわざと履き違えることで怪談と云う考察を成立させようとするが、一転“蒲団”はラノベの解釈にすべての物語は妄想だろうと締め括る。“檸檬”の考察の末に至る諦念と云う構築は見事だが、“金閣寺”を自害への布石と見なすには不自然さを否めない。三島が切腹に至ったその切迫感を作品の完結では割り切れない。だとしても作家や作品に纏わる蘊蓄は興味深いし、なんといってもバーテンダーみさきとの軽妙なやりとりに、重鎮曽根原教授の心中の乗り突っ込みずっこけには何度も笑い声をあげてしまった。
2022/02/28
みこ
バーで繰り出されるよもやま話から奇想天外な新説(珍説?)が提示される。まるでミルクボーイの漫才のような汎用性。このフォーマットを産み出した時点でもう何でもありかもしれない。ついに歴史から文学へと展開されたようだ。「檸檬」や「金閣寺」に関する話は梶井や三島の人生を後から見返している後出し感が否めないがトンデモ説であることを前提にこういう楽しみ方もあるよねくらいのスタンスで読めればそこそこ楽しい時間が過ごせる。
2022/01/09
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