凍える島 (創元推理文庫)
凍える島 (創元推理文庫) / 感想・レビュー
夢追人009
近藤史恵さんが1993年に著したデビュー作で第4回鮎川哲也賞を受賞した孤島ミステリの傑作です。本書はクリスティー女史の名作「そして誰もいなくなった」に挑戦した作品ですが本家にさらに複雑な捻りを効かせた力作ですね。女二人で喫茶店「北斎屋」を営む店長の野坂あやめは、瀬戸内海に浮かぶ無人島への夏の一週間の慰安旅行の話を持ち掛けられて応じ客ら男女4人ずつの計8人で向かう。その島は数年前は新興宗教の聖地だったという曰くつきの場所だった。あやめは実は今回一緒に来た矢島夫妻の夫・鳥呼(とりこ)と過去に不倫関係にあった。
2022/03/22
三代目 びあだいまおう
典型的クローズドサークル。近藤史恵デビュー作。小さな喫茶店を営む女性が主人公で終始彼女視点で進む。従業員と常連さんとで慰安旅行を企画し無人島へ、当然次々と参加者が死んでゆく。一体犯人は?とお決まりのお話。違和感を常に感じるんです。でも淡々と進む。恋人が、親友が、近しい人が次々と死んでゆくのに緊迫感や恐怖があまり感じられない。派手な演出がない。だからか内心凄くリアリティーを感じる。明らかになる真実に、人を愛するってこんなに我を犠牲にできるものなのかと唸る!少なくとも私はそこまでの自虐的な愛を知らない‼️🙇
2020/05/14
さてさて
『わたしたちは、あまりにも無力だった。わけのわからない大きな力に、友だちが、ひとり、またひとりと連れ去られてゆくのを、どうすることもできなかった』。デビュー作としての初々しさも感じるこの作品。そこには、近藤さんのミステリー作家の今に繋がる『連続殺人』の秘密に迫る物語が描かれていました。まさかの犯人とその凶行の理由になんとも言えない気分に苛まれるこの作品。感情移入を阻むような登場人物と『新興宗教』の呪いを感じさせる不気味な『無人島』の演出の中に「凍える島」という書名が絶妙に浮かび上がるのを感じた作品でした。
2023/04/26
ehirano1
推理小説としては比較的早い段階で犯人の予想は付くのですが、本書の目的はどうやらそんな謎解きではなく、その『動機の深層』でした。その意味で本書は稀有で興味深いものでインパクトがありました。
2020/05/16
麦ちゃんの下僕
あの貫井徳郎さんの『慟哭』を抑えて第4回鮎川哲也賞を受賞した、近藤さんのデビュー作。K県沖の無人島へバカンスにやってきた、喫茶店のスタッフ&常連客+α…その中の1人が、密室の中で心臓を抉り取られた状態で発見される! 事前に読んだ読友さんの感想も賛否両論でしたが…なるほど、これは“本格ミステリー”の装飾を施した“心理サスペンス”…そして昭和の文豪が書きそうな“劇場型”の恋愛文学でもありますね!まるで芥川賞受賞作のような、読者の安易な共感を拒む文章も苦手な方が多そう(苦笑) 絶賛はしませんが僕は楽しめました。
2023/02/18
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