結ぶ (創元推理文庫)
結ぶ (創元推理文庫) / 感想・レビュー
優希
面白かったです。18編の短編集。どの物語も夢と現実の狭間にいるようでした。退廃的な異世界に引き込まれ、戻ってこれなくなるのではないかという恐怖。不思議な空間に入り込み、読み終えたときは少し世界が違って見えました。幻想や夢幻の世界は彼岸と此岸を結ぶ橋なのかもしれません。
2016/08/12
Rin
淫靡で凄惨で、現か幻かそれとも、もっと異なるものなのか分からなくなる。誰が語っていて、誰のことを語っているのか。今のことか、昔のことなのか、それとも未来のことなのか?惑わされながらの読書。 「そこは縫わないで」と縫い手との会話に惹かれた「結ぶ」会話という点では「花の眉間尺」も軽快なやり取りが楽しい。でも会話の内容はやはり薄気味悪いもの。それでも物語の世界の続きが気になって、「天使の倉庫」薄っすらとした恐怖感が後を引いて。「薔薇密室」では既読の本を思い出しつつも、全く違った世界がもらえました。
2017/12/09
ちょろこ
2017年結びの一冊。「そこは縫わないでと頼んだのに、縫われてしまった」もう、この言葉で心がざわつき、瞬く間に夢か現か幻か…の幻想的な世界に連れていかれた。怖くもあり残酷でもある数々の物語、言葉の紡ぎかたひとつでこうも魅せられるとは。表題作はもちろん「花の眉間尺」「U Bu Me」のラスト一文が特にゾクゾクきた。日本語とはこうも美しいものなのか…言葉と言葉の結びかた、紡ぎかたひとつで世界は変わる、あらためて日本語の美しさと奥深さを感じた、一年の結びに相応しい一冊だった。
2017/12/29
藤月はな(灯れ松明の火)
グロテスク且つ毒薬を忍ばせた水を飲ませるような平面的な狂気を宿した話を編み込んだ作品。アルマジロ、玉虫など無関係そうに見える語句が辞書的に並べられた後に美しくもグロテスクな変貌を遂げる表題作、齢を経るにつれて層となって熟成された狂気が静かにあふれ出る『水色』、最早、帰らない「若さ」という甘い幻想に囚われ、時の醜さを拒絶した『薔薇密室』がお気に入りです。
2013/11/30
かりさ
《そこは縫わないでと頼んだのに、縫われてしまった》―艶めかしくたちのぼる耽美と綺想の世界に思考が溺れ揺らめく時間。水色の夢、燃える紙の城、水底に眠る記憶、記した薔薇密室の文字…皆川先生の織り成す幻想に心酔します。 「薔薇の骨」が美しい。
2021/05/30
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