双頭のバビロン〈下〉 (創元推理文庫)
双頭のバビロン〈下〉 (創元推理文庫) / 感想・レビュー
nobby
時空をまたぎ世界を駆け巡った挙句、もう忘れていた意味深な上巻冒頭に繋がるのがスゴい!ウィーンという躰(バビロン)から生えた二つの首がハリウッドと上海という2つの魔都(バビロン)で絡まりあう展開はまさに圧巻!或る人物の台詞が浅はかな想像を壊滅させるのと同時に、それを発端に全てが結び付くのを一気に読まされた。史実や映画界事情に引き込まれる一方で、はたして何が幻想で、それは誰の言動なのかと困惑するまま描かれたのは実は癒着双生児よりも隣りにいた男の物語…ラストで示される二つの告白、太字フォントであることに光あれ…
2021/05/30
Rin
これはツヴェンケルの物語なのかもしれない。そして実際に言葉を交わしたことのないゲオルクとユリアン。でも彼らは常にお互いを意識し合っている。彼らはお互いがお互いに囚われているのかもしれない。ふたりのどちらがより幸せかなんてわからないけれど、最後の最後はユリアンの方が満たされていたのかも。どこか艶美で退廃的な雰囲気のなか、3人がすれ違っているのがもどかしくも目が離せない。ツヴェンケルの想いをもっと知りたいも思ったけれど、最後まで読むとこれはこれで良かったのかもしれない。廃れたなかにも美しさを感じる物語でした。
2018/07/11
naoっぴ
奇想とリアルが融合した(!?)凄い物語でした。ひとりは映画監督、もうひとりは社会的に抹殺された双子の男の数奇な運命が、互いの精神感応の幻想を交えつつ展開し、様々なエピソードが次から次へと描かれる。視点はくるくると変わり、リアルと幻想が交じり、時系列も時折迷子。物語がどこに運ばれるのかが見えず下巻も読みづらい~(^^; だけどラストに集約されるユリアンとツヴェンゲルの切ない想いに触れると、それまでの混乱がすべてチャラに。難解なパズルが仕上がったような心地よい疲労感と爽快感の読後。皆川作品、癖になります。
2017/03/31
絹恵
交わり続け、そして離れ続けたとしても、呼応した時間が永遠を与えたようでした。この身体の神無き心に宿った確かさは、何とも引き換えようのない慈愛を教えたのだと感じました。重みを知るから空虚さを感じ、空虚さがあるから重みを受け容れられるからこそ、空白の身体に重みを得ることが出来たのだと思います。
2016/11/02
ken_sakura
魔球の様。豪華、壮麗、贅沢♪( ´▽`)ツヴァンゲルの本名を知った時から鳥肌Σ( ̄。 ̄ノ)ノ双生児ゲオルグとユリアンの数奇な生。舞台は3つ。1892年から1900年代、末期のオーストリアハンガリー帝国首都ウィーン。1910年代、無声映画時代に欧州と覇を争うハリウッド。1920年代、租界地が設定され阿片に酔う上海。ゲオルグ、ユリアンにパウルを加えた三人の章が交代で回る形式。パウルのその後は救われた\( ˆoˆ )/著者の本は初めて。他の著書も読もうと思う。おもしろ本棚の課題本に落選した本。
2016/12/15
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