二度のお別れ (創元推理文庫) (創元推理文庫 M く 4-1)
二度のお別れ (創元推理文庫) (創元推理文庫 M く 4-1) / 感想・レビュー
chiru
『悪果』というダークな警察小説を先に読んだので、作者が同じとは信じられなかった。『悪果』が「陰」なら、こちらは「陽」。刑事二人の掛け合いがハイテンポでユーモアがあって好き。スリリングな攻防も秀逸ですが事件はまさかの迷宮入り。誘拐ものは、その方法が奇想天外になるのがベターですが、トリックは早々に見ぬけてしまう。でも、あっと言わせる最大の衝撃は『タイトル』がラストまで握ってた…うまい作りだなあって感嘆。「グリコ森永事件」との類似から実際に警察の聴取を受けた作品。色んな意味でおすすめ。★4.5
2019/04/03
修一朗
読んでてなんだか既視感があるなぁと思ったら,あぁ,グリコ・森永事件ではないか。これがあの有名な「黒川博行さん,迷惑にも警察に疑われる事件」の元ネタ作品でしたか…。身代金の受け渡しシーン,堪能しました。軽妙な大阪弁トークはデビューから変わらず,でも疫病神シリーズとかと違って,こっちはバディキャラで魅せるというよりは,トリック重視の本格推理ものだったのがちょっと意外だった。十分面白かったけどね。黒まめコンビは本格推理系だということが分かったので,次「8号古墳」へ…
2017/11/05
zero1
犯罪を行うメリットはあるか?大阪を舞台に、捜査一課の黒マメコンビが事件を追う。約400万円を奪い人質と逃走した犯人。その後、身代金1億円の要求が。会話にユーモアがあり、上司の無能さなど笑えるが鋭い指摘も。題名の理由は最後のページに書かれている。このデビュー作のために、黒川はグリコ・森永事件で週刊現代から犯人扱いの記事を書かれ、住民票の不正取得さえ行われた。モデルとなったのは三菱銀行人質事件(1979年)。読メでの登録が145件と少ないのが不思議なくらいの秀作。1983年サントリーミステリー大賞佳作。
2019/04/19
セウテス
大阪府警シリーズ第1弾、黒川氏デビュー作品。銀行強盗が飛び掛かってきた男性を人質として誘拐、新たに一億円の身代金が要求される事件。身代金の受け渡しを巡り、犯人と警察の駆け引きが見所であり、グリコ森永事件との関連を疑われた話題作でもある。シリアスな展開の中、黒マメコンビの良くも悪くも軽快な大阪弁が、作品をテンポ良く読み易く仕上げているのは実に巧い。トリックよりはプロット優先の、読ませる警察小説になるのだろうが、ならばこそ謎解きの場面にこだわりが欲しかった。なんとも切ない幕切れが、心に沁みる様に残る話である。
2016/09/14
aquamarine
著者のデビュー作であり黒マメコンビのシリーズ一作目(てとろどときしんは既読)。疫病神シリーズのリズムの良い掛け合いやスピード感を知っていると少しテンポがゆっくりには感じますが、それでもとても読みやすいです。内容は銀行強盗が人質ごと逃げて、その人質に身代金一億円が要求されるというもの。正直途中で犯人は予想できてしまったのですが、それでも夢中になって読みました。そしてたどり着いたのはなんともやるせない重いラスト。確かに華はないかもしれませんが私は古くても古臭くはなくむしろ渋いこのコンビの話はとても好きです。
2015/10/31
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