11文字の檻: 青崎有吾短編集成 (創元推理文庫)
11文字の檻: 青崎有吾短編集成 (創元推理文庫) / 感想・レビュー
W-G
かなり久しぶりに読んだ青崎有吾作品。う~ん、裏染シリーズが止まってしまい、刊行ペースもガクッと落ちて、もうガチガチの本格は難しくなってしまったのかと、ちょっと心配。この短編集も、8編のうち半分は短編ともいえないショートショートで、内容もミステリ色が薄め。何だったら、一番面白かったのは『恋澤姉妹』だったかもしれない。レビューを拝見していくと、表題作の評価が高いように感じる。だけど個人的には微妙。たしかに著者らしいキレのある思考の発展が垣間見られはする。しかし、紙一重で論理の域には届かなかった印象。
2023/02/06
パトラッシュ
著者の自称通り屋根裏部屋のような短編集だが、オリジナル性の高い作品揃い。JR福知山線脱線事故を扱った現在唯一の小説に全面ガラス張りの館での密室殺人と、他の作家には絶対に思いつけないアイデアだ。「飽くまで」や「恋澤姉妹」などは、いわゆる奇妙な味のジャンル選集に収録されてもおかしくない。また表題作は明らかに桐野夏生『日没』へのオマージュであり、同じ設定でも自分ならこう書くと挑戦している。いずれも短編で読むもがもったいなく思えるが、長編でだらだら読むよりストレートに驚かされる。よい意味でのトンデモ本と称せるか。
2023/05/12
青乃108号
運営さんから頂いたギフトコインでBOOK☆WALKERで購入。少しずつ読んで漸く読み終えた。冒頭で著者自身、洗練された短編集ではないと書いているが、大変バラエティーに富んだ、飽きさせない力作揃いの8編収録。特に⑦は著者が好きだというアクション場面の活写が見事で読み応えがあった。又、最後の⑧は映画「CUBE」を想わせるシチュエーションパズルで、11文字から成るキーワードを正解させない限り拘束部屋から脱出出来ないという理不尽な状況から、絶対無理と思われた脱出をいかに成功させたかを描く狂気の物語。青崎有吾凄い。
2024/10/31
まこみや
「恋澤姉妹」が恋愛の本質をテーマにしていることはわかるが、目黒さんや吉田伸子氏が絶讃するほどの感銘は正直受けなかった。「噤ヶ森の…」は、ポーの「盗まれた手紙」のように、人は隠す意図があればそれを見つけるが、隠す意図がなければ見つけることができないことを示している。「11文字の檻」はポー「黄金虫」を連想した。論理的な推論に基づく仮説によってゲームのルールを推測し、一歩ずつ文字を確定して最後に隠された文を発見する。どの作品も人間心理の盲点をついていて、それを逆手に取って鮮やかに解決する。ユニークな作家と思う。
2024/01/04
seacalf
思いがけないものに出会えるのも読書の醍醐味のひとつ。普段読まないタイプだったが大当たり。作者本人も作中で出てくる探偵達も弁舌爽やかに小気味良い言い回しやセリフを繰り出してくるので、これはクセになりそう。上質の漫画を読んでいるような妙に軽い気もするがアンソロジー作品も含まれていたのか。なるほど。器用だしアイディアの豊富さに目を瞠る。あらすじにある通り本当に色んなジャンルが収録されていて、ひとつ読む度にいちいち巧いなあと驚かされる。まだ短編集を読んだだけなのに、うっかり青崎さんのファンになってしまいそうだ。
2023/12/24
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