火葬国風景 (創元推理文庫)
火葬国風景 (創元推理文庫) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
読んでいて自分の変態度が如何に甘っちょろいものか、知りました。例えるなら、乱歩作品は障子の陰や密室でいたぶって想像を掻き立てる系。そして十三作品は衆人環視で突然、乗馬鞭を使って唖然とさせる系な変態度です(笑)初っ端の処女作「電気風呂の怪死事件」の立て続けに三人死に二人は吹き矢による毒殺という設定に引く。更に真相は「こうじゃないといいな」と思っていたものが当たり、心の中で「まあ、何て変態!」と悲鳴を上げました。気持ちが悪いくらいの脚フェチな「階段」もラストでなんちゅう事、言っっとんじゃい(笑)
2017/09/18
HANA
純粋な推理や探偵活劇風の作品が中心となっていた『獏鸚』に対して、本書は幻想怪奇風味の作品が中心となっている。いやどれもこれも、好みの作品ばかり。とても戦前に書かれたとは思えないディストピア小説の傑作「十八時の音楽浴」や、著者の怪奇小説では「俘囚」と並んで頂点に立つであろう「三人の双生児」ラストで嫌な気分にさせられる事請け合いの「恐しき通夜」等、どれをとっても素晴らしい。表題作は突き詰めたら「パノラマ島」や「裏面」に迫る傑作になったろうに。大正から戦前独特の昏い悪夢めいた想像力の結晶、堪能させてもらった。
2015/12/07
geshi
まだ日本にSFという言葉が無かった時代の、探偵小説と奇想と科学のジャンルを越えた短編集。特に好きな作品3つ上げると、『恐ろしき通夜』猟奇譚が徐々に繋がっていくストーリーテリングがうまい。グロテスクなオチも好み。『不可思議なる空間断層』幻想的な話が一旦探偵小説的解決を見たと思ったら、そこから再び奇想へと戻り、ラストでミステリ的捻りを加える面白いつくり。『十八時の音楽浴』人間を完全に律するディストピアの想像力が凄いな。この後の日本の事を考えると、なかなか感慨深いものがある。
2016/05/28
たち
海野十三さんは「獏鸚」に続き二冊目です。相変わらずぞっとする話ばかりでしたが、「獏鸚」よりSFっぽい話も入っていて、バラエティーに富んでいるように感じました。中でも、「不思議なる空間断層」「火葬国風景」「三人の双生児」が面白かったです。
2016/09/11
波璃子
すっかり作風にハマってしまった海野十三2作目。日本SFの草分け的存在として知られている人だけあって音楽浴や赤外線といった科学的なモチーフが面白かった。科学といっても現代ではかなり怪しく気持ち悪いものが多いが、この怪しさと気持ち悪さがクセになる感じだった。昔の人の発想ってすごいと思う。
2015/11/19
感想・レビューをもっと見る