深夜の市長 (創元推理文庫)
深夜の市長 (創元推理文庫) / 感想・レビュー
おにく
海野十三氏は昭和一桁から戦後にかけて、主に推理小説や空想科学小説を発表した日本SF小説の始祖の一人と言われ、今では“青空文庫”でも数多くの作品を読むことができます。これまで青空文庫で“生きている腸”“宇宙女囚第一号”を読んで、夜店の見せ物小屋のような雰囲気にはまりました。時代を感じさせる「エイヤッ!ドタリ!」「ウワーン、痛いよ。乱暴な!」などの擬音やかけ声も微笑ましい。ただ、今回の表題作“深夜の市長”は夜の雰囲気は良いのですが、謎解きが単純で、個人的にちょっと物足りなかったかな。他の作品も読んでいきます。
2017/01/14
kasim
「帝都」の無国籍でハイカラな雰囲気にしびれる。今はどこにもない都市の忘れ形見のよう。皆が畏れる市長をはじめ、夜だけ中庭に出現する塔に籠る科学者や十銭洋酒店の常連たちなど、夜の住人は皆魅力的。帝都を仕切る裏の顔と言っても市長は秩序の護り手だし、文章がさっぱりしていてノワール感はない(他の掌編には猟奇的なのもありますが)。解説の通り「本格ものでもSFでもないファンタジックなサスペンス」。タイトルが好き。「深夜の都知事」じゃ締まらない。
2017/09/26
ヒダン
半分を占める表題作のあとにショートショートほどの短編がテーマ別にまとめられて並ぶ。ショートショートは最後に種明かしされてなるほどとは思うが、深い印象は残らない。SF的な発想はいくつか見られる。表題作はいろいろな要素が盛り込まれているのになんだかあっさりしてた。仮名遣いで『のらくろ』を想起したり、戦前の東京はこんな町だったのかと思ったり時代を感じるところが多い。夜の世界の住人はとても個性的で、それが最後に解散してしまうことに寂しさを覚えるのもあっさり感の要因かもしれない。夜はわくわくであり不気味でもある。
2017/07/05
あき
★★★ 深夜の市長、後半は少し退屈でしたが、序盤で不思議な雰囲気にぐっと引き込まれました。
2017/08/02
豆茶
昼間とは全く別の顔を見せる大都市T(東京)。趣味の深夜の散歩の途中で殺人の現場に出くわした『僕』は、『深夜の市長』と呼ばれる怪しい老人と知り合う…婀娜な年増女、奇妙な塔に住む風変わりな街の科学者、コケティッシュな謎の美少女等、入れ替わり立ち替わり現れる夜の住人たちの個性が強烈過ぎて、本筋どっかに飛んでった感。これはミステリというより、昭和レトロな活劇の雰囲気を愉しむものかと。他の短編はコント、小話的なものが多く、その中では「空中楼閣の話」「仲々死なぬ彼奴」のナンセンスさが面白かったかな。
2017/04/01
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