アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
本屋襲撃からは「パン屋再襲撃」を思い起こすだろうし、小説中に散りばめられたボブ・ディランの「風に吹かれて」からは、やはり『風の歌を聴け』を連想するだろう。文体もまたそうだ。つまり本書は村上春樹へのオマージュとして書かれているのである。2年前と現在との2つの時間軸を設定する試みは、大学に入学したばかりの僕(椎名)にとっては、未来ではなく過去を想起させるものとなり、奇妙なノスタルジーがそこに醸成されることになる。そして、そうしたある種の時間倒錯的なニヒリズムもまた村上春樹に通底するもののように思われる。
2017/01/31
サム・ミイラ
非常に評価が高くかつタイトルの意味が分からない作品。読み進むとなるほどアヒルと鴨とはそういう事か。コインロッカーの意味は最後に分かる。現在と二年前の出来事が交互にそのほとんどが会話で進行する物語。確かに上手い。個性的な登場人物。コミカルな掛け合い。さりげなく巧妙に配置された伏線。そしてトリックに気づかせずどんでん返し(笑)確かに面白かった。しかし私には合わなかった。技巧に過ぎるというか作りすぎな感じが強すぎて正直あまり心に響かなかったのだなきっと。ドルジ任せの終わり方は好きだけど(笑)
2015/06/06
遥かなる想い
2004年このミス国内第二位。 ひとり暮らしをはじめた大学生が、隣人から“広辞苑を1冊強奪する“という計画をもちかけられたことで始まるこの事件は、2年前の事件と現在の本屋襲撃が次第につながっていく。 今から二年前、河崎と琴美とブータン人のドルジは、ペット虐待事件に巻き込まれてしまい……。二つのストーリーが意外な形で収斂する構成が見事な傑作ミステリ。第25回吉川英治文学新人賞受賞作らしいが最後の結末には正直びっくり。とんでもない構成力である。
HIRO1970
⭐️⭐️⭐️序盤はまさかの春樹さんのパクリかと思いましたが、パン屋よりも本屋襲撃の方が食べ物屋じゃないので、やや高尚かなとくだらない事を思いつつ読み進んでいましたが、2年前と現在の話が同時進行で少し又少しとかみ合い始め、シンクロし始めると物語の全体像が朧げに見え始めます。後半に向けて段々と眼が離せなくなる展開で尻上がりにシンクロ率が上がり二つのストーリーがリンクしながら、興味本位だったり私怨だったり自殺だったり私刑だったりの様々な罪や罪の清算の仕方を描きだし、読者の罪の分水嶺が如何に曖昧かを試してきます。
2015/05/14
ehirano1
まいったねこりゃ、完全に好きになってしまいました、再読なのに。なんだこりゃの序盤には違和感(=伏線)と陽気なギャ・・・との係わりがあったりでいつもの伊坂さんなんですが、後半から加速化と思いきやそのままのペースですが事は淡々と明らかになって来て、終盤は涙ぐむシーンもあったくらいでした。私のようなオジサンをも涙ぐませるとは、いやはやまいった、勿論良い意味で。
2023/03/04
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