白の祝宴 (逸文紫式部日記) (創元推理文庫)
白の祝宴 (逸文紫式部日記) (創元推理文庫) / 感想・レビュー
ユメ
紫式部が探偵役を務める平安推理絵巻第二弾。歴史小説とは、それ自体がミステリのようだと思うことがある。断片的な史実を基に、人物の生き様、行動の理由をどう組み立てるか。歴史を解釈し、物語に仕立てる作家は、さながら謎解きに挑む名探偵のようだと。そして私は、森谷さんの推理が好きである。今作の軸は『紫式部日記』がどのようにして誕生したか。森谷さんの解は説得力があり、パズルのピースがきちんと嵌まったような快感を覚えた。歴史の影に消えゆく運命の女たちが『紫式部日記』に自分の生きた証を残そうと願った切実さが胸を打つ。
2017/05/01
のびすけ
前作では身の回りの謎解きだったが、今作は土御門邸で起きた物騒な事件をめぐってミステリ色が濃いストーリー。紫式部と阿手木が解き明かす事件の意外な真相。虚実織り交ぜた人間模様と物語の構成がお見事でした。定子様亡きあとの修子姫宮と敦康親王の辛い境遇が印象的。事件の傍ら、紫式部が編集を進める彰子様出産の宮中の記録は、「紫式部日記」の成り立ちの一つの解釈として興味深い。女房たちの日記の書き出しがこぞって皆同じ、というのが可笑しい。
2024/04/16
本木英朗
日本の女流ミステリ作家のひとりである作者の作品のひとつである。俺はもちろん今回が初めてだ。時は平安。人々の注目を集めるひとりの女性がいた――その名は紫式部。かの『源氏物語』の著者だ。実は彼女は都に潜む謎を鮮やかに解く名探偵でもあった……という話である。一応最後まで読んでいたから、まあいいよ。しかしもう作者の作品はいいかなあ。何だかちょっと面倒なところもあったしね。まあ、いいけれどさ。とりあえず以上です。
2021/01/11
きょん
ミステリよりも宮廷生活のあれこれや女房達の婉曲な会話とか、それ以外の部分が多いし面白いので、途中盗賊消失の謎とかどうでも良くなって来てしまった。それにしても現代は現代で大変だけど、あの時代の女として生まれなくて良かったとしみじみ。
2015/08/03
アルピニア
平安王朝推理絵巻三部作の2作目。「紫式部日記」にまつわる謎に対して森谷さんの想像の世界が繰り広げられる。「千年の黙」に登場した阿手木も活躍。中宮彰子のお産という一大イベントを同じ邸内で時を過ごした女たちの様子が推理の伏線を交えながらありありと描かれている。伏線が最後に次々と回収されていくのが気持ちよいほど。哀しい結末ではあったが・・。私は、「あとがき」を読後に読む派である。今回も読後に著者あとがきを読んだのだが、はじめて「これは『あとがき』を先に読んだら3倍くらい楽しめたかもしれない・・」と思った。
2015/12/27
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