流れ舟は帰らず (木枯し紋次郎ミステリ傑作選) (創元推理文庫)
流れ舟は帰らず (木枯し紋次郎ミステリ傑作選) (創元推理文庫) / 感想・レビュー
つみれ
主人公はアンチヒーロー属性がたっぷり詰め込まれた「渡世人」木枯し紋次郎。いわゆる股旅ものの短編集で、江戸時代後期のアウトローの世界を様々な角度から描いてみせている。やり方は非合法ながらも最後は悪に鉄槌をくだす彼の生き様、美学は、ただひたすらにクールでカッコいい。ミステリーと銘打ってある通り、物語は各編ひねりがきいており、素直に読ませてくれない意地の悪さがいい。物語に五つの制約を持たせたという話が解説にあったが、この制約が物語、キャラクターの魅力をうまく引き出している。時代物+ミステリーの妙を味わえる一冊。
2018/12/16
くさてる
木枯し紋次郎初体験。ドラマは世代的に未見なのですが、中村敦夫の顔と爪楊枝くらいの印象はありました。しかしそれとはまったく関係なく面白かった。渡世人が生きる世界観がみごとに構築されていて、時代小説に慣れない私にも違和感なく読みこむことができ、人物造形もパターンなようでそれぞれに個性がある、なおかつお話が巧みで文章が流れるように読みやすいと何拍子揃ってるのこれ。切な目の話として「明日も無宿の次男坊」のラストがたまらなくせつない。良かったです。
2020/11/18
geshi
股旅ものの代表の木枯し紋次郎がミステリ?と思っていたけれど、これは面白い。時代物なのにカタカナ語入っていてエンタメ作品として抜群に読みやすいから、人気が出たのも頷ける。渡世人と探偵の共通点は共同体(グループ)から意識して外れ、情やしがらみを捨ててから存在が成り立つハードボイルドな生き様にあった。どんでん返し展開が人を信じれば裏切られる無情を強く印象付ける。陰謀、暗号、サスペンス、変形の法廷劇、作品ごとに変化をつけて読者を飽きさせない名人芸。
2018/05/12
タカギ
木枯らし紋次郎は時代劇のヒーローで、笹沢左保はサスペンスドラマの原作者、というイメージだった。木枯らし紋次郎を生み出したのが笹沢氏だったとは。時代小説×本格推理小説が10編。どちらからしても極上だと思います。紋次郎の生き方には苦しさ、哀しさを感じた。泳いでいないと死んでしまう魚のように、目的のない旅、旅のための旅を続けている。紋次郎は凄腕の剣豪なので、殺陣の場面はとても映像的でカッコいい。カバーイラストもいいけれど、オノ・ナツメさんや斉藤岬さんに紋次郎を描いてほしい。
2018/02/27
北風
紋次郎ミステリ傑作選? 今は昔大流行した紋次郎が事件を解決? かなり異色な気がしたけれど、読んでみたら面白い。義理と人情に厚い渡世人って紹介されるけど、印象としてはかなり冷徹。今時びっくりするくらいニヒルでハードボイルド、孤高の男。持って生まれたカリスマか、人に頼られ、冷たくあしらい文句を言われるも、最後の最後には助けてしまう。短編ミステリとしても見事。傑作選ということで、多少似たような傾向は見受けられるけれど、これだけ面白いならば、他のシリーズ作品も読んでみたくなるかっこよさだった。
2018/10/04
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