アーサー王ここに眠る (創元推理文庫 F リ 4-1)
アーサー王ここに眠る (創元推理文庫 F リ 4-1) / 感想・レビュー
みっちゃん
伝説とはかの如く創られ、伝えられるものなのか。狭量で野卑なだけの、まるで盗賊の頭領のような男を聖なる王に。聖剣の授受の奇跡、聖杯の探索の旅、そして王妃と騎士の道ならぬ恋までも。真の卑小な姿を知る者でさえ、その物語こそが真実、と徐々に信じていく不思議。ひと、とは見たいものだけを見、信じたいものだけを信じる、のだろうかね。
2022/02/16
さつき
襲撃により故郷を失った少女グウィナは吟遊詩人ミルディンに拾われます。ミルディンの紡ぐ言葉により英雄譚が生まれていく様はドラマティック。物語の持つ力を存分に感じられます。現実の粗暴で利己的なアーサーを知る人々さえも魅了する英雄の冒険には、ミルディンの切なる願いがこもっていました。戦いに明け暮れる男の世界も、噂話に満ちた女の世界も体験したグウィナの愛の行方はどうなるのか?道ならぬ恋のときめきも、血生臭い復讐も、末期の夢も…人の世の何と儚いことか。だからこそ人は物語を求めるのでしょう。
2022/03/02
Chikara Tonaki
アーサー王がただのならず者共の親分で、その可能性にかけた吟遊詩人が、その紡ぎ出す物語と情報収集・操作能力で偉大な人物に仕立てあげようとする物語を、ひょんな事で拾われた少女の視点で描いてます。何というか、お話し自体は「アーサー王って、実際きっとこんなもんだったんだろうな」と思えるものなのですが、情景描写に惹かれて読み進めさせられました。他人にオススメするか?と問われたら否と答えますが、しばらくしたら読み返していそうな気がします。
2021/11/22
璃龍
楽しく読みました。
2024/09/14
ゆきんこ
もう一つの、あり得たかもしれないアーサー王の物語。どこにでもいる女の子が、一人の語り部と出会い、物語を紡いでいくことで、現実と幻想が渾然一体となっていく。最後には、それらが大きな流れとなって全てを押し流してしまう。人間は見たいものを見、聞きたいものを聞く生き物なんだな、と。そうであれ、と願う何者かが語るからこそ、後の世に形を変えながら、物語や伝説として残っていくのだろうな、とも。
2021/09/29
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