ブラックウッド傑作選 (創元推理文庫 527-1)
ブラックウッド傑作選 (創元推理文庫 527-1) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
ほとんどがジョン・サイレンスシリーズで既読。「邪悪なる祈り」はヨーロッパの黒魔術という土台に、荻原朔太郎の「猫町」と中国の蠱道の要素が入り混じったように感じました。自分であったはずが人間ではない「何か」に変貌していく「ウェンディゴ」の圧倒的な恐怖と言ったら!「足が、足が燃える!!」と言う言葉が凄まじく、怖かったです。「囮」はウェイク・フィールド特有の人へと狂気が伝染するゴースト・ストーリー型に仲の良くない夫婦に横恋慕する者という人間関係の歪さが入り混じる悲劇で人間のエゴの方が印象深かったです。
2013/05/11
よみとも
ビックリしました。面白くて。直前に読んだ白水社のブラックウッド短編集は結構あっさり目だったので、長めの作品集のこちらは飽きるかな、と思いつつ読み始めるや、一気読みでした。美しい自然の描写から、何か得体の知れない力がうごめく原始的な自然へ読者を引き込んでいく筆力、これぞブラックウッドの真骨頂。特に「ウェンディゴ」はブラックウッドの最高傑作と言われるのも納得の作品でした。図書館で借りたのですが、絶版みたいですね。もったいない!
2014/07/04
マーロウ
何かの本で、「いにしえの魔術」が面白いと情報を得たため、古本屋にて購入。 オカルトな作品群だが、自然の描写等は細やかで、文章も読者を捉えて話さない引き込みっぷり。現実にうまくリンクさせながら書いていて上手い。 ロマンがあって好きである。
2019/08/18
いいほんさがそ@蔵書の再整理中【0.00%完了】
**ホラー**日常的で、ありふれた物事や経験の中こそ、目を背けることができない恐怖が隠れている・・・。人間が"人間以外"にジワジワと変貌する、精神的恐怖を迫真の筆力で描き出した『ウェンディゴ』など、九つの恐怖を味わえる怪奇譚(紹介文・他より)――『ウェンディゴ』がとにかく秀逸!人を人としてたらしめる心の要素が、徐々に、しかし確実に失っていく恐怖。人間が持ち得る犯罪的思考、思想を"悪"と言うならば、"魔"とは人間の脳の構造、仕組みでは根本的に到達できない領域であることを恐怖と共に理解させられる。傑作ホラー!
2012/09/11
madhatter
再読。ブラックウッドの真骨頂が、自然の化身の恐怖にあることは間違いない。しかし再読してみて、彼の人間描写も優れていると思った。これは訳者氏の言う、人間が自然に回帰する恐怖、或いは悦楽を描く以上当たり前で、「犬のキャンプ」は、ジョーンとサングリーの描写がしっかりしていなければ全くの駄作となる。また「邪悪なる祈り」は、主人公の郷愁の念が丹念に描かれているからこそ、その崩壊が恐ろしいのだし、「囮」は複雑な人間関係を基盤とした、苦い現代小説とも読める。その他お気に入りは「移植」「炎の舌」。
2011/09/06
感想・レビューをもっと見る