炎の眠り (創元推理文庫 547-3)
炎の眠り (創元推理文庫 547-3) / 感想・レビュー
財布にジャック
生きているのに三十数年前に死んだ自分の墓を見つけて、その謎を探るお話なんですが、ただのミステリーではありませんでした。まず、読み終えて直ぐにこのお話に登場する「グリム童話」の「がたがたの竹馬小僧」の内容をネットで確認しました。又、ラストにもグリム童話の有名な登場人物を出すあたりは、心憎い演出だと感心しました。しかし、ダークです!童話が出てくるとハートフルな内容なのかと思いたいですが、そう甘くはありませんでした。けれども、不思議な体験を主人公と共有出来て、読書の醍醐味を味わえる作品で大満足でした。
2011/11/08
眠る山猫屋
再読。このシリーズで一番衝撃を受けた、そして最も好きな作品。孤児だったウォーカーが、運命の女性マリスと結び付く前半の多幸感!ひしひしと近づく不吉な影。自身にそっくりなレリーフを墓地で見つけ「やっとここまでたどり着いたね」という声。単純な自分探しではない、暗夜航路。マリスや友達にまで及ぶ影が正体を現す時、ウォーカー自身にも魔法としか言い様のない力が発現していく。対決の果てに待つ、驚愕のラスト。後の作品にも登場する人々の中でも、導師たるヴェナスナクが鮮烈。ナチスから子供たちを逃がすシーンの美しさたるや!
2019/07/01
りつこ
大好きなジョナサンキャロルを久しぶりに再読。ダークファンタジーっていわれてもなんだかあんまりピンとこないんだけど、リアルにファンタジーがひょいっと踏み込んでくるところがたまらなく魅力的。恋人を送った帰り道に奇怪な自転車に乗った奇怪な男が自分に向かって聞いたことのない名前で呼び掛け「よく戻ってきた!」というシーン。すごく印象的でぞくぞくする。唐突だったり荒かったりするところもあるけどとにかく面白い!また少しずつ再読していこうと思う。
2016/08/01
星落秋風五丈原
『炎の眠り』には『月の骨』のキャラクターが何人か登場する。しかし、それはテーマ上の続編であり、それ自体で独立した作品となっている。キャロルの作品はすべて、現実対非現実というテーマを持つ変種であるように思える。ロンデュアの小説は、実際のところ、繰り返し登場するキャラクターの存在によって彼の他の作品から区別されているにすぎない。
2011/02/07
冬見
魔法を持った孤独な男が恋をした。それがすべての始まりだった。女は子を産み、男は子を連れ去った。そうして自分を愛してくれたたったひとりに魔法を分けた。しかし子は恋をし、男の元から愛は連れ攫われてゆく。何度も、何度も……。◆少しずつ魔法が物語を満たしてゆく。気付けば輪廻の輪の上。「自分を愛させる」ために何度も子を殺し続ける男の存在は恐ろしくも哀しくて、『フランケンシュタイン』の「怪物」を思い出す。ダークファンタジィではあるがウォーカーが自分のなかの魔法を見つけてゆく過程はわくわくと心躍った。幕切れも好き。
2021/07/23
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