沈黙のあと (創元推理文庫 F キ 1-7)
沈黙のあと (創元推理文庫 F キ 1-7) / 感想・レビュー
hit4papa
<<月の骨>>シリーズの第5弾です。前作までは、ファンタジーと言われれば、なるほどとなるストーリーでしたが、本作品は、ファンタジーではありません。ちらりと再登場するキャラクターが、ファンタジーの残り香を漂わせるぐらいです。「ぼくは息子の頭に銃を突きつけている」という冒頭の一行から、何か起きそうと期待しつつラストまで読み進め、最後の一撃を見ないまま読了してしまいました。<<月の骨>>シリーズは、次作『天使の牙から』で完結ですが、本作品は、これを読むことを躊躇わせます。後味は頗る悪いのでダークではありますか。
2020/05/13
sin
導入で語られた衝撃の結末のつかみがあっても、そのあとの甘々なノロケ話に疲れてしまったが…そんな下拵えが出来たところで来た来た闇の背景がと思いきやなんか普通のクライムノベルな展開に…主人公の自己憐憫に辟易しながら読み進めると、突き放すかのごとき見事な結末にやられました。ただひとつ残念なことに最後になって小道具の拳銃が活かされていないように感じます。
2015/03/11
星落秋風五丈原
『沈黙のあと』はラヴストーリー。今回は、「ペーパー・クリップ」の作者である、ちょっと有名な漫画家のマックス・フィッシャーが、美術館の展覧会でリリー・アーロンとその息子リンカンに出会う。マックスは語り手であり、彼の人生とアーロン母子がそれに及ぼした影響について考察し始める。すべては牧歌的。しかし。過去の作品と同様、『沈黙のあと』においても、物事は目に映るままではない。そしてマックスは気付いてしまう。リリーのリンカンに対する庇護には、単なる母性愛というのではない何か別の動機があるのかもしれないということに。
2011/01/30
冬見
売れっ子漫画家の主人公はある美しい母子に心惹かれてゆくが、少年がかつて女が誘拐した赤ん坊であることを知る。全ての嘘を抱え共に暮らすことを決めるが、それは破滅の始まりだった。◆息子の頭に拳銃を突きつける男。物語はそんなワンシーンに始まる。絵に描いたような幸福は、暗い過去の罪の上に建つ砂上の楼閣。瞬く間に崩れ去る砂の行方を我々はただ茫然と見つめることしかできない。前半部が甘くゆったりしているぶん、終盤の苦さ、絶望感がひたすら重い。愛という言葉でシュガーコートされたエゴが取り返しのつかない未来を運んできた。
2022/03/17
雪守
漫画家のマックスが出会ったのは奇妙で魅力的な母子リリー、リンカン。この二人との出会いが彼の人生を天国、そして地獄へと突き落とすことになる…。作者らしい皮肉でユーモアセンスが光った作品。間違った決断が全てを狂わせていく展開は見事でした。もっとも月の骨シリーズと聞いていたので終盤までずっと、あれ、ファンタジーはいずこ?という想いに捉われていましたが(笑)。
2013/01/03
感想・レビューをもっと見る