日本怪奇実話集 亡者会 (東西怪奇実話) (創元推理文庫)
日本怪奇実話集 亡者会 (東西怪奇実話) (創元推理文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
よくもまあこれだけ集めたものだと感心しました。怪奇小説ということではなく実話というところがまたすごいと感じました。まあ現在に比べると明治や大正時代というのはイメージ的にはここに掲載されているようなランプや明かりが少ないということもあるのでしょう。結構見間違えたりしたような感じで実話になっているのかという気がします。牧逸馬の「西洋犬張子」が私にはめっけものでした。
2024/01/21
藤月はな(灯れ松明の火)
「月光の下」は永遠に取り残されてしまった夫が只管、遣り切れない。平山蘆江の「妖艶淪落実話」は花柳と梨園界の繋がりを意識しているのが印象的。また、時系列を再構築している語りが不思議さを醸し出す。小泉八雲の「布団」の話は余りにもいじましい語りに涙なくしては読めない。対し、同じ「布団」でも橘外男の実話怪談は薄気味悪さが際立つ。女性にしか見えない幽霊の姿と布団の中から出てきたものが繋がった時の悍ましさよ。そして幽霊の因果が分からない事と全ての結末に「因縁なのでしょう」と結ばれる事が禁忌の強さを引き立てているよう。
2021/01/17
sin
平井呈一の『世界怪奇実話集』に習って3つのパートで構成されており、Ⅰ は、田中貢太郎、平山蘆江の聞き集めた実話…貢太郎は当時の実話怪談、蘆江は花柳界の艶噺で、男の不実に幽霊の影あり、女性の怨みか?男の後ろめたさか!Ⅱ は、平井に縁を持つ小泉八雲家と、作家たちに依る実話…八雲の清涼な描写が良いが、益体もない化け物屋敷で子猫を敷石に叩き付ける足穂の所業で後味悪し。Ⅲ は、怪奇実話にその名を留める著名人の作品…バラエティーに富んだ内容で特に『心霊術』の本当なら凄い現象のあっけらかんとした描写と結末に唖然とした。
2022/08/20
HANA
平井呈一の『屍衣の花嫁』が西洋なら、本書はそれと対になるよう日本の実話が収められたアンソロジー。どこか記録風な前者に対して、鬱々とした話が多いよう感じられるのはお国柄を表しているのかなあ。内容はこの手のアンソロジーでは外してはいけない田中貢太郎に始まり、八雲を始めとする小泉家代々から平井呈一に続く話。最後に鏡花、綺堂といった名だたる作家の怪談を持ってくるという構成の妙も光る。特に橘外男作品の中でも一二を争う怖さの「蒲団」は何度読んでも凄まじいな。既読も多かったですが、怪談を心底楽しめる出来となっています。
2021/01/30
眠る山猫屋
荏原中延や蒲田など、土地勘がある場所のかつての様相に想いを馳せる。北陸の寒々しい景色、浅草界隈の賑わいに潜む寂漠を描かせると、かつての文人たちの技量の凄さを感じる。現代作家にはない感性なのだな。怖い話ばかりではないけれど、稲垣足穂や泉鏡花の文章に滲む怪異の香りには、戦慄してしまう。橘外男の『蒲団』、噂には聞いていたが、拭い切れない呪縛と因果にはクラクラする。陰惨な事件は過去にもあったし、その捉え方も現代よりソフトだった訳ではないのだ。過去を生きた文人たちへの敬意を新たにしてくれた一冊。静かな夜にお薦め。
2023/10/11
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