幻獣の書 (パラディスの秘録) (創元推理文庫)
幻獣の書 (パラディスの秘録) (創元推理文庫) / 感想・レビュー
HANA
腐り落ちる寸前の果実を思わせる甘美な退廃の都、夜な夜な街を徘徊する影、因習に満ちた系譜の貴族、館を徘徊する幽霊。ゴシック小説を思わせる道具立てだけど、その実は『堕ちたる者の書』以上にエロスとタナトスに満ち満ちた物語であった。ただし先の話が性別を軽々と越えていくのに対して、この話で中心になっているのは性行為そのもの。何となく中心となっている魔物が病の暗喩みたいに思えるし。特に幽霊の最後の部分等は『三人の詐欺師』中の「白い粉薬の話」に匹敵する悍ましさ。一族の発端から終焉まで、まさに息つく暇もない一冊であった。
2016/12/23
星落秋風五丈原
異形VS人間の組み合わせ。異形の姿は男性だったり女性だったり、こちらも入り混じる。そして妖しくエロティックなセックス場面。
2018/08/28
ハルバル
エロスと退廃に満ちたダークファンタジー。ローマ時代から続く古い幻想都市パラディス(語源はプルートゥ=ディスなので、「死の都」とも読める)を舞台に、アッシリア起源の性の魔物ウトゥクに取り憑かれた呪われた一族の物語。語り手ラウーランの受難と魔物退治の枠よりも、ウトゥクの呪いで性的な受難を負ったエロスとエリーズの悲劇が印象的。セックスを魔性とする呪いがキリスト教では救えず、むしろ異教の魔術によって救われるのはなかなか示唆的。とはいえ男女がこの世にあるかぎりはウトゥクのような魔物が消え去ることはないのかもしれない
2018/05/05
ほんだや
パラディスシリーズ。満を持して誕生日に読み始める本ではなかったww
2017/05/06
けいりん
ジェミシンが影響を受けた作家にタニス・リーをあげているというので、そういえば『堕ちたる者の書』がすごく良かったのに積みっぱなしだと思い出す。積んでた歳月損した気分。面白かった。 怪しげな因縁の中から浮かび上がる太古の恐怖、というモチーフは、クトゥルー 神話をはじめとするウィアード・テイルズ系怪奇小説を思わせ、そういう読み方でも面白いのだけど、耽美な妖しい描写、退廃の香り、そういった部分はさすが「ダーク・ファンタジーの女王」。 最後はちょっとびっくり。所謂どんでん返し等ではないけど、そう終わるのかと。
2018/10/30
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