フロリクス8から来た友人 (創元SF文庫)
フロリクス8から来た友人 (創元SF文庫) / 感想・レビュー
催涙雨
作中何度か引用されるイェイツの詩は2年前に刊行された「電気羊」にもエピグラフとして登場している。作中の引用外の部分には「真理はお前の心の内の他に無いのだ,だから天文学者から学ぶな,光学にて回り過ぎゆく星の軌道を追う,彼らの言葉を求めるな」といった不可知論に似た部分もある。わたしはこのあたりまったく詳しくないので突拍子もない解釈になりかねないのだが、こういった近代的、大勢的な物事よりももっと個人的、内省的な物事に関心を向け、個人が愛おしいと思う物事や隣人を大切にするべきだという願いが含まれているように思える
2018/12/15
kokada_jnet
70年発表。典型的なディックの「駄作長編」。登場人物が無駄に多いし、プロットも破綻しまくり。大森望の翻訳作品は、特に危険。文庫のあらすじ紹介欄の「ディック本邦初訳の雄編」って(??)。この本は92年刊行で末尾の長編リストで未訳長編のほとんどが「創元SF文庫近刊」となっているが。実際に『ヴァルカンの鉄鎚』が出て、全長編の訳がそろったのは2015年だから、ここから20年以上かかった訳か。
2015/12/27
阿部義彦
創元SF文庫より、遠い未来人類から突然変異として生まれた〈新人〉と〈異人〉、それにより〈旧人〉は支配され偉くなる望みも絶たれる。しかしそこに、〈旧人〉の救世主プロヴォーニが帰還する。しかし実はプロヴォーニはテレパスだった。惑星フロリスク8の実態の無い何にでも変身できる異星人にひろわれて、専制政治の地球を変えるために。地球の議長グラムと理論物理学者イルドの造形が何とも出色。お約束のエキセントリックな美女も。〈新人〉は全て白痴同然の子供になってしまう。タイヤの溝掘り職人ニックが大活躍。後半は息をつかせぬ展開。
2017/05/13
サイバーパンツ
ロリコン主人公に、タイヤの溝掘り職人という変な仕事、颯爽と現れる《救世主》プロヴァーニと、ディックらしさを出しつつも、案外すらすら読めたのは、ディックお得意の現実と虚構の境目があいまいになるような展開がなかったからかな。だからか、あのドライヴ感がないのはちょっと寂しいなと思った。また、プロットが継ぎ接ぎでぎこちないのは、その代わりにやってるのかなとも思った。
2016/05/14
ヤギ郎
未来SF小説。知能の発達した<新人>、特殊能力を獲得した<異人>、そして能力の無い<旧人>による階層社会を描いている。主人公は能力を持たない<旧人>に所属している。公務員になるためには、能力を証明する試験に合格をする必要があるが、その公平性に疑問を抱く。そこへ反社会運動を行う<下級人>と出会う。混沌とした社会の中で正義や愛を探す。また、<旧人>を救うために旅立った英雄に期待を抱く。複数の勢力が英雄と接触しようとする。最後はよくわからない。
2021/01/03
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