時間衝突 (創元推理文庫 697-1)
時間衝突 (創元推理文庫 697-1) / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
遺跡を調査している考古学者が不思議な事に気付いた。たまたま三百年前に写された遺跡の写真が発見されたのだが、写真の遺跡の方が今よりもずっと古びている。遺跡が年とともに次第に新しさを取戻しつつあるとしか考えられないが、そんな事があり得るだろうか?
1990/04/18
白義
タイトルがすでにこの小説の全てを表している。文字通り、本作では時間と時間が正面衝突する。車と車が正面からクラッシュするように、時間というものそのものが交通事故を起こすのである。まさに、そのビジョンを成り立たせるために理屈を総動員して時間理論を構築し、人間ドラマや社会描写も適当にぶん投げるというSF読みのためのSF。何せ最後は時空に対して斜めに存在する何かが強制的に問題を終わらせてしまう。ご丁寧に作中でもデウス・エクス・マキナと断言している。本当にこの時間理論を発表したかっただけなのだ
2014/02/05
アルビレオ@海峡の街
理論や理屈なんてどうでもいい。SFはやっぱこうじゃなくっちゃ!魅力的なキャラクターや練りこまれたストーリィも大切だけど、やっぱりアイデアが重要。「時間線と時間線が正面衝突?」なんて深く考えずに読むべし。久しぶりに楽しめるSFが読めました。薦めてくれたスターライトさんありがとうございました。
2011/11/11
fukumasagami
「われわれは失敗した」少尉が低い声でいった。「わが同士がわれわれの報告を聞くことはない」 「それがどうした、ばかやろう」アスカーがうなった。「地球上の生命には、あときっかり二世紀しか残されていないーそのあとは、すべてがおしまいだ」 血と土。ヘシュケは思った。血と土。 三人は、そこに立ちつくしたまま、いつまでも死の光景を見つめていた。
2020/02/04
生存戦略
面白かった。普通に想像する時間SFとは一線を画し、タイトル通り、時間が衝突する。おそらくこの本でしか味わえない感覚でそのオリジナリティが本書に価値を与えている。一方で作者の性格的なものと思われるが、いろんなアイデアを盛り込むもののそれらを掘り下げるのはあまりお好きでない様子。訳者大森望氏もあとがきで書いているように文学性やキャラクター性はなく、純粋にSF的アイデアを楽しむ作品。ワイドスクリーン=バロック。やや広く浅くの感は残ったが、本書のコンセプトは一部が深化されダン=シモンズのあの超大作に受け継がれる。
2013/06/07
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