ひとめあなたに… (創元SF文庫) (創元SF文庫 あ 1-2)
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ひとめあなたに… (創元SF文庫) (創元SF文庫 あ 1-2) / 感想・レビュー
青蓮
Twitterのフォロワーさんより。地球に隕石が激突し人類に逃げ延びる道はないーー終わりが近付いて来る中で突然別れを告げられた恋人に一目会いたいと練馬から鎌倉を徒歩で目指す圭子。その道行に遭遇する4つの物語。人が抱える狂気や暗部が極限状態に置かれた時溢れ出す。中でも真理の幼少期のエピソードが若干自分と被る感じで読んでいてちょっと辛い面も。圭子は最後まで狂わなかった。一途に思い続けて歩き続けた。その姿が眩しく見える。隕石が落ち、皆死んでしまう。けれどもラストは慈愛に満ちた美しい朝焼けが見えるよう。
2018/11/02
ゆかーん
もし、1週間後に隕石が落ちてきて、地球が崩壊するとしたらどうしますか?これは夢だと現実逃避するのか、静かに自殺するのか、愛する人のもとへ会いに行くのか、突然の人生の幕引きに戸惑う女性の心情が刹那的に描かれています。可愛らしいタイトルですが、内容はとてもグロテスクで、愛した夫の人肉スープを作る妻や、無差別にバイクで人をひき殺そうとする男など、衝撃的な展開ばかり待ち受けます。村田沙耶香さんのようなクレイジーな部分を感じつつも、どこか甘く切ない気持ちにさせてくれる新井素子さんの優しい結末に引き込まれました。
2017/01/30
速読おやじ
隕石が衝突して地球滅亡するが決してパニック小説ではない日本三大小説の最も古い作品(長い!)。伊坂さんの「終末のフール」、凪良さんの「破滅の前のシャングリラ」も読んだが、本書が一番ぶっ飛んでいる。小説の文体も何だか突拍子もなく、登場人物の多くが狂気に満ちているのにどこかコミカルで、雰囲気だけは星新一。凪良さんは本書に影響を受けたらしい。新井素子さんの作品を読むのは10代の時以来。あの頃若かった彼女ももう60代だ。しかし1週間後に地球滅亡って。その時やはり最後に残るのは「愛」なのだろうか。そうあって欲しい。
2024/02/12
canacona
終末モノ。数十年ぶりの新井素子さんでしたが、こんな感じだったっけ?一週間後に隕石が落ちてきて世界が滅亡する世界。終末モノの中でも一番狂気が突き抜けてる。あたし口調が可愛らしくて、狂気が一層際立つ。荒井由実のchinesesoup、確かにちょっとは毒のある曲だったのだけれど、こうなるとは。夢に生きる少女、逃げる為に勉強し続けた女の子。子どもを守るために元カレと逃げようとするのはまだ理解が出来るな。そして、この世界で正気を保ってる圭子も、また狂気に飲み込まれてるように見えたのは気のせいじゃないはず、うふっ。
2022/12/04
テツ
あと一週間で地球が滅亡すると知り、圭子は練馬から鎌倉まで振られた恋人に会いに行く。最期に一目会いたいと鎌倉を目指す彼女とその途中で出逢った人たちのそれぞれが終末を覚悟して取った行動とか淡々と綴られる。これ発行されたの1981年なんですね。僕が終末モノが好きなのも理由なのかもしれませんが、時代を全く感じさせないパワーが凄まじい。全てが破壊され消え去っても何かが残ると信じることができるから、人間はいつか死ぬ存在なのに日々の営みを積み重ねられるのかな。あと一週間で地球が終わるなら、僕は何をしよう。
2019/04/15
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