盤上の夜 (創元SF文庫)
盤上の夜 (創元SF文庫) / 感想・レビュー
Tetchy
四肢をもがれて不具となった女性、強くなりすぎた故に滅びゆくゲームの行く末が見えてしまった男、治癒に身を捧げる「都市のシャーマン」、統合失調症になったがために才能が開花した男。物事を探求し、見えざるものを見えるまで追い求めていく人々の純粋さはなんと痛々しいことか。本書はそんな不遇な天才たちの物語。人々の精神の高みはやがて宇宙以上の広大な広がりに達する。また四角い盤上や卓上は常に対戦者には未知なる宇宙で限られた人々たちが到達する空間だ。そんな異能の天才たちが辿り着いた宇宙の果てを見せてくれるSF短編集。傑作。
2017/02/03
hnzwd
凄い本だ。異なるゲームを扱った6編の物語は一話完結。一話ごとに扱うテーマも異なる上、その幅も広い。作者の多才さを感じます。しかも、、最後まで物語を読むと現れる大テーマが、、物凄いところまで連れてこられた気持ちにさせてくれるという。。一話目を書いた時点でここに着地するつもりだった事を疑わせないクオリティの高い作品群でした。
2015/03/24
ハタ
盤上・卓上遊戯を主題にした人間の意志の力を描く物語を6作品収録。どの作品も色濃く一筋縄ではいかない為、此処では表題作「盤上の夜」に関しての感想を。主人公は四肢を失った少女「灰原由宇」 賭碁が暗躍する世界で彼女は身体を売られる最中に視覚情報のみで碁を体得する。研鑽を重ね囲碁盤が肉体感覚の一部となった彼女が目指すのは「抽象で世界を塗り替える事」 言語を学習する事により語彙を研ぎ澄まし肉体となる碁盤に産み落とす魔境を彷徨う少女の決意は、薄氷を裸足で歩く様な刹那さを孕んでいる。そしてその描写が格段に素晴らしい。
2016/03/13
遥かなる想い
盤上遊戯を軸に 6つの奇蹟を綴った短編集である。日本SF大賞受賞作らしいが、対局の 果てにある世界が見えるようで、心ざわめく。 表題作の若き天才女流棋士 由宇の存在感が ダントツで心に残る…異能の天才たちは 勝負の先に何を見たのか?卓上遊戯を 巡る人間たちの人生譚だった。
2022/05/07
KAZOO
これはSFなのかなあという印象が一番に来ました。最近のSFというのは変わってきているのでしょう。いま小川哲さんの「ゲームの王国」を読んでいますがそれもSFなのかなあという気もしています。内容的には様々なゲーム(囲碁、チェッカー、麻雀、チャトランガ、将棋など)についての話ですが、精神的な症例が出てきたりとミステリー的な色彩のほうが強いように感じました。内容的には結構面白く、麻雀などのルールには再認識させられたりもしました。
2023/10/08
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