図書室の魔法 上 (創元SF文庫)
図書室の魔法 上 (創元SF文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
本書はヒューゴー賞、ネビュラ賞、さらには英国幻想文学大賞を受賞しているのだが、上巻を読む限りでは幻想文学大賞はともかく、ヒューゴー、ネビュラ両賞の理由が全くわからない。少なくてもこれまでのところはSFという要素がおよそ見当たらないからである。モリ(主人公、15歳の少女)の日記の中にはたくさんのSF作品が登場するが、彼女の書評めいた言説が下されるばかりである。母親はどうやら魔女であり、モリ自身も魔法使いの素養がありそうなこと、またモルの死とモリの足の怪我の秘密も明かされていない。下巻では一気に展開するか。
2024/09/09
Die-Go
図書館本。最愛の双子の妹を亡くし、自らも身体に不自由を得た15歳の少女。精神を病んだ母から逃れ、生まれてから一度も会ったことの無かった父の元へと行くが、そこから寄宿制の学校へと入れられてしまうことに。その中で孤独を囲うが、彼女には本と言う大事な友があった。1970年代から80年代にかけてのイギリスを舞台に、様々な読書体験を通して少女の成長を日記形式で描く。『指輪物語』など著名な作品から無名の作品まで取り上げられていて、物語に入り込む導入にもなっている。下巻でどのような展開になるか楽しみ。★★★★☆
2019/03/08
ユメ
「この本で描かれるすべての出来事は虚構であり(中略)ただし、妖精はちゃんと実在する」ー著者の謝辞より。ファンタジーに読み耽った頃、自分には妖精が見えないことにがっかりしたものだ。それでもきっと彼らは存在する、そう思わせてくれるのが物語の力だった。孤独な少女モリもその力に救われて生きている。そして、彼女自身の物語がまた妖精を見せてくれる。どんなに辛くても、没入できる本が残っている限り生き続けられる。本にとっては最大級の賛辞であり、一人の少女の告白としては痛々しい感情が、息苦しいほどこちらにも浸透してきた。
2015/07/10
Panzer Leader
読書好きな少女の日常を日記形式に綴った小説だけど、あまりにもさらっと魔法とか妖精の事が語られているので、これはファンタジー・SFなんだってことを思わず忘れるくらい。著者を投影したと思われる少女の一挙一動が、本好きな自分にとっては納得できるし愛おしく思える。さあ後編は一体どう話が動くのか。
2017/01/12
Willie the Wildcat
殻に閉じこもる少女。人間の遺す廃墟に緑の植物を運ぶフェアリー。モルの幻影を含めたフェアリーは、モリの心底描写。生死や存在などを問い続けている感。「本」が救いであり、救いのきっかけとなる。2人の司書との出会い、司書が紹介する読書会、そして読書会で広がる”向書性”の仲間の輪。SFマニアにはたまらない引用作品の数々。理解しきれない私の場合、少々もどかしい。但し、(数少ない私が知っている)主人公の大好きなSF作品を揶揄され、WaPoを批判する件は微笑ましい。それにしても”カラース”って何だろう。
2020/01/16
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