皆勤の徒 (創元SF文庫) (創元SF文庫)
皆勤の徒 (創元SF文庫) (創元SF文庫) / 感想・レビュー
かみぶくろ
あかん、これは本格的にやばいやつや。思わず関西弁になってしまうほど突き抜けた小説。小説?小説だよねこれ?解説で示されるSF的想像力の最長到達点という賛辞も納得。根本的にグロいし、エンジョイしたかって言われたら素直にうんって言えないし、そもそも文章から情景をイメージするのが困難で疲弊する。それでも読んで良かったと心から思えるのは圧倒的な未知の世界を見せてもらえたから。自宅で普通に椅子とか洗濯物とかに囲まれながら、こんな異形の別世界を創造してしまうなんて、作者にも人間の脳の可能性にもしみじみと感動してしまう。
2015/08/14
翔亀
異様な世界が異様な言葉で構築され、「酉島語大辞典」でもなければ到底論理的には解読できないのだが、何故か溢れ出るイメージに眩暈をしながら読み進めてしまう(時間はかかった)。奇怪な異生物とか異星人が登場するからではなく、まさしく未来の人間として描かれているからだ。昆虫や芋虫もどきの粘液ぐちょぐちょの生き物に自分がなった気分になる。確固としてある筈の自分の身体と精神の基盤が崩される喪失感のような感覚。人間が進化により偶然に今の形態になったのに過ぎず、このように進化してもおかしくないということを体感できる。
2016/01/08
いちろく
紹介していただいた本。何なんだコレは!?が初読時の感想であり、解説を読み出来る限り自分の中で理解を試みて期間を置き再度読み返してみても、印象は変わらなかった。紹介本&日本SF大賞受賞作という事前情報だけで、予備知識無しに手に取ったら凄いモノに出会ってしまった。固有名詞だけでも独特な作品の世界観へ導くのだから圧巻である。十代後半の頃に、空の境界を読み感動した時の感覚を思い出した。再読しても読み返しても凄いと思える事は、素敵だ。
2018/09/30
さっとる◎
連綿綿綿と続く命のメインロードは遥か彼方の未来行き。そこに犇めく沢山の人人人、虫も木も犇めいて蟲になる森になる。叡智が人に翼を心臓にエンジンを。先へ進んでいつしか制御できなくなった時、文明がAIが崩壊で大気を轟かしただろう。その奔流は混沌の海になる。終わりを終わりなき終わりにするために始められる喧騒と狂騒、命をつなぐその先のここではないここで命をつなぐためにする変相。破壊されるよりも早い速度で繁殖を繰り返せ。そうやって遠い未来まで生きていく。そうやって遠い過去から生きてきた。私はそこでいつまで私だったか。
2019/10/12
さっとる◎
まずは全てをぶち壊すところから。残るのはお馴染みの平仮名50音、それから漢字ね。あとは、泥みたいな世界。私は、ワタシは、…だからつくらないと。ヒト、をつくらないと。つくるのは従業者で、従業者には当然社長、が、いるだろう?知らないけど、いるだろう社長。つくるにあたっては、泥、がある。そこには当然いるだろう虫。虫虫虫三つ集まって蟲。皿菅(けっかんもどき)なんてね、ルビ振って。思い出せないなんてね、なんて贅沢。取り消せない過去に苦労してるとか、そんなことも忘れた。失われないのは喪失感だけって、それって、何の話?
2019/10/04
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