うどん キツネつきの (創元SF文庫)
うどん キツネつきの (創元SF文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
高山羽根子は『首里の馬』で芥川賞を受賞しているが、これはそれ以前の最初の作品集。表題作「うどん きつねつきの」は第1回創元SF短編賞佳作。ただし、SFとはいってもSFの概念を大幅に拡張する必要がある。タイトルを見た時にはキツネうどんの話かと思ったが、「キツネ付きの」ではなく、「狐憑きの」だった。この人の作品はこんなふうな惚けた味わいが信条であるが、川上弘美のそれともまた違って独自の可能性を持っている。表題作以外では「おやすみラジオ」の無軌道ぶりが面白い。いずれにしても、これまでの枠組みを超えていきそうだ。
2024/06/21
かみぶくろ
不思議だけど逞しい想像力に満ちた、デビュー作を含む短編集。SFの賞から出た筆者だが、内容的にはSFと純文学が融合したような趣き。日常生活に差し込まれた異物が随所に表現されるが、その濃度は作品によって異なるものの、確かにSF的な存在感とワクワク感がある。芥川候補となった「居た場所」は随分不思議な読み心地の作品だったが、デビュー当初からずっとそういう作風だったのね。あとなにげに文章力がかなり高い。今後さらに飛躍しそうな、けっこう注目度の高い作家だと思う。
2019/03/10
おかむー
タイトルと表紙の印象でユルくてライト寄りのSFを想像していたのだけれど、大幅に予想をはずれて正直難解。『もうすこしです』。ある意味SFっぽくないというか、あまり奇抜さのないようでほんのり奇妙な日常の風景に、わずかにSFなのか?というような要素が少しだけ加わって、奇妙さを漂わせたまま「これで終わり?」となる五編の短編集。個人的に感性が合わない作家さんなのか、どの物語も「それで何が言いたいの?」と疑問符ばかりでモヤモヤ。俺が受け付けないということはある種文学的なのかもしれませんな。
2017/08/04
藤月はな(灯れ松明の火)
「母のいる島」は身体を痛めても16人目を産もうとした母の覚悟に胸が熱い。だからこそ、迷彩服の妄言男は本当に鬱陶しい。「おやすみラジオ」が一番、好きです。ラジオを巡るとても身近なブログ。「もしかして自分の身近に作者がいるのでは?」という好奇心が巻き起こした意外な結末。寂しげなラストの一言がこうなるまでの過程や人間の有り様を考えると、やけに苦しかった。「巨きなものの還る場所」は「あの日」だと気付いた時の衝撃よ。それを踏まえるとあの展開は決してそうはならなかった現実を際立たせるように思えてしまい、泣いてしまった
2020/06/28
Vakira
年甲斐もなく未だにバイクに乗っている。何故バイクに乗り続けるのか?と聞かれたら「バイクは走っていないと倒れちゃうからね」と答えている。僕のバイク哲学。食べるためではなく、働かせるためでもなく何故動物を飼うか?この本でペットの存在意義を問われた。3姉妹は捨てられていた犬を飼う。数年ごとに現れる経過場面には関わる友人たちのペットが登場、ニワトリであったり、フクロウであったり。カバーの絵なんかもなんかほっこり系。そうかと思いきやこの題名。狐憑き。きつねうどんの話ではなかった。最後の2ページでプチ覚醒体験。
2020/09/30
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