万歴十五年: 一五八七文明の悲劇
万歴十五年: 一五八七文明の悲劇 / 感想・レビュー
さとうしん
為政者たる万暦帝、官僚の申時行、海瑞、軍人の戚継光、思想家の李贄、そして彼らの背後で存在感を示す張居正。万暦十五年(1587年)当時の政官軍学の代表である彼らの動きを通して、伝統中国の政治・社会にそびえる「徳治主義」の壁を描き出す。本書の内容を現在に引きつけて見ることに、自序に否定的な文言があるが、やはり現在の日本を含めて「失敗」を迎えつつある社会に対して鑑となるのではないか。
2021/05/01
電羊齋
万暦帝、張居正、申時行、海瑞、戚継光、李贄らさまざまな人物の生涯を通じて、明末社会の病根――徳治主義(及びそれがもたらす人治主義)を克明に描き出している。時代遅れとなった建国以来の法制度、現実離れした徳治主義の下、それぞれの立場で問題解決に努力した彼ら。だが、彼らは現実の問題が深まれば深まるほどに力を失い、明末社会は結局のところ「仁義道徳」という息苦しい精神論に依存した徳治主義へと傾斜していく。そして息苦しさだけが強まり、問題は解決しない。さて、現代の我々は明代中国に比べ、どれだけ進歩しているのだろうか。
2016/03/12
Jirgambi
およそ社会では、本音と建前とが乖離するが、明朝末期ほど本音(現実の情勢)と建前(徹底した徳治主義)が強烈に別れていた世界は無い。個人的には戚継光の他、明朝皇帝の記述に興味があった。明後期と言えば万暦帝の他、豹房で遊び遠征を敢行した正徳帝、大礼議の嘉靖帝が居る。ブラック労働並みに政務を執る清朝皇帝の姿と見比べると明朝皇帝はアレだが、何も全てが彼らのパーソナリティに帰する事は無く、やはり明朝皇帝としての立場で目の前に異様な乖離をまざまざと見せ付けられたら不貞腐れそう。
2019/01/22
たぬき
原理主義というか宗教国家明朝
2010/01/10
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