ポストヒューマニティーズ――伊藤計劃以後のSF
ポストヒューマニティーズ――伊藤計劃以後のSF / 感想・レビュー
磁石
伊藤計劃さんの著作を読んだあと、そこに描かれた未来以上のビジョンは、ないんじゃないかと思ってしまったが、ここに載せられている研究者や批評家が、その道筋と展望を見せてくれた。日本的ポストヒューマニズム。身体性の復権によって、一元論から複雑な二元論へと変化すること。意識や言語がどのように形成されていったのか、その過程から導き出されるものもある。ネット小説の今後とは。今が旬の話題がてんこ盛りで、読んでいてワクワクさせられた。
2013/08/29
バチスカーフ
いささか基礎体力の必要が過ぎるきらいはあるが、少なくとも現役の「SF者」を自認する方には一読をお薦め。「伊藤計劃」「ポストヒューマニティーズ」「「浸透と拡散」等をキーワードにした10篇の評論はどれも説得力がある。その中でも海老原豊氏の「カオスの縁を漂う言語SF」をとくに挙げたい。「個別・具体的な社会における実践である表層構造」と「身体的根拠を持つ深層構造」の2層に分けて「言語」を考えるモデルは、次代を読み解く戦略として有効に感じた。他に、山川賢一氏「アンフェアな世界」や飯田一史氏「ネット小説論」なども。
2014/05/29
Kaede
現代日本SFで数多く扱われている「ポストヒューマン」に対する論評。最近読んでいるSFのなかにポストヒューマン的な要素の強いものが多いのと、かつ好きなので読みました。思っていたより切り口の幅が広く、特に「カオスの縁を漂う言語SF」と最後のキーワード集がよかった。
2016/04/16
さぼ
② 序論で示された日本的ポスト・ヒューマンという切り口は比較文化的な側面もあり広くを射程に入れられる面白いものだと思ったんだけれど、いかんせん各論に入ると個々の作家作品サブジャンルと、広く構えた序論に対して限定的なテーマが多く、ただ序論からは単語レベルで意味を引き継ぐ程度なので一冊を通した文脈が弱い。(結局日本的ポストヒューマンのリアリティって? 伊藤計劃以後のSFって?) SFに疎いためかブックガイドにもなりお得。渡邉大輔のSF映画、飯田一史のネット小説論は興味深い。巻末のキーワード集が地味にうれしい。
2014/02/06
たろーたん
英米の「ポストヒューマン」の特徴が、1「特異点を超えた人間が死を喪失するなど多幸感に満ちており、2人間を情報ととらえ、魂=情報として描く。3、またバックボーンにはキリスト教の千年王国主義や復活思想が見える。 それに対して、日本の「ポストヒューマン」の特徴は、1SNSやコミュニケーション、「空気」の中に溶け込んで融解、あるいは接続していくような主体を描く傾向があり、2キャラクター文化が強いため、自身とキャラクターの関係性を誘拐させがちな傾向がある。 これは覚えておこうかな。
2018/02/05
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