小松左京自伝: 実存を求めて
小松左京自伝: 実存を求めて / 感想・レビュー
テツ
小松左京が77歳のときに書いた自伝。理路整然とした文章や自身の作品の根底に流れるもの(戦争体験)を客観視している姿からは老いを感じさせない。膨大な知識と類い稀なセンスが混じり合ったところに生まれたのがあのSF作品の数々。そりゃ面白いよな。知識は作品の礎となりセンスはそれを彩る。作家としてその二つを持ち合わせていることの素晴らしさを感じた。巻末の主要作品のあらすじも良いなあ。年末年始の休みは小松左京を読もう。
2017/11/06
ひさか
2008年2月日本経済新聞出版社刊。第Ⅰ部人生を語る、第Ⅱ部自作を語る、特別編高橋和巳を語る、という構成。いつもパワフルな小松さんが、阪神大震災後の鬱の時期というのがあったのは知らなかった。高橋和巳さんとの深い親交も知らなかった。小松さんの自伝やっと読めた~という感慨があります。
2021/12/14
阿部義彦
第1部が日経新聞に連載された『私の履歴書』に加筆修正したもの。第2部は小松左京マガジンの看板記事を再構成したものです。表紙の写真が示す如く当時の資料は全て紙の本が中心で、SFと言えどもファクトを重視して説得性を持たせるスタイルでしたので、読んだ書物の量は想像もつきません。『日本沈没』を書くにあたり、最初の電卓が12桁で十三万円で出たのを買って日本列島の重さを計算して沈めるエネルギーを概算しました。2部では聞き手も手練で深い所まで突っ込んでます。同期の高橋和巳との対比が際立ちます。思弁SFの祖。猫好き!
2023/03/01
ぐうぐう
作家としての小松左京を形成していったのは、関西と戦争、そして高橋和巳であったことが、この自伝を読むとよくわかる。なんでもありの関西の土壌が小松の好奇心を多岐に渡らせ、過酷な戦時体験が「もし戦争が終わらなかったら……」というパラレルワールドな恐怖心を育み、高橋和巳という稀有な文学者がそばにいたことで小松の批評性を深化させていく。小松左京がSF作家になったことは、必然だったのだ。(つづく)
2011/08/04
白義
戦後最大スケールの作家の自伝であり、つまり一つの巨大な視点から見た戦後精神史でもある。単純にファンから見ても、あの作品の続編構想や作品間の繋がりが!っていう驚きがあるし、それら膨大にして巨大な作品群の背景、エピソードもしっかり語られる。ダンテやドストエフスキーやカミュに影響を受け、宇宙規模の実存を問おうとした真の巨匠、小松作家の全てがここにある。巻末の主要作品前半のあらすじ紹介も、各作品への興味を存分に引き立てる。紛れもなく、戦後文学者の自伝でも最高レベル
2011/10/08
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