ドストエフスキーとの59の旅
ドストエフスキーとの59の旅 / 感想・レビュー
かごめ
人間は生物でありながら、肉体維持のためのパンと精神の自由のためのパンを必要とする。後者は恋愛であったり芸術であったり娯楽であったりする。そこには殺人も含まれる。「カラマーゾフ兄弟」「罪と罰」とドストエフスキーの殺人の意味を著者は散歩の途中の思い付きのように語る。「悪意」は平凡な生活にこそ潜むのか。他方、散漫にも思えるがスターリン時代のロシア、原爆、テロ事件、国家的犯罪についても書き綴る。ドストエフスキーは再読したくなったが…春にドストエフスキーは似合わない、と言い訳しておく。著者はナルシストだとも感じた。
2018/04/08
踊る猫
五大長編を恥ずかしながらこれから読む身なので深いことは書けないが、思っていた以上にサクサクと読みやすい。それでいて中身はあっさりしたエッセイのようでありながら、やはりドストエフスキーを(最低でも『罪と罰』と『カラマーゾフの兄弟』を)読んでいないと楽しめない一冊のようにも思う。そのあたり残念なのでいずれリヴェンジしたいところ。とは言え亀山氏の自分語りのパートはそれはそれで面白く、ソ連時代スパイの容疑が掛けられたことなど興味深い話も多々あって氏の他の本も読んでみたくなった。まずは『罪と罰』から読んでみようか?
2016/08/21
シッダ@涅槃
全体的に沈鬱なエッセイ集(ほとんど断章)だが、文学的な気分にさせてくれる。これから読まれる方はドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』はおさえておいたほうが良い。えらく長い小説だけど。沈鬱だけど学生時代に夢中になったロシア人女優が「だー」(ええ、その通り)と発音するのが残念だった、などユーモラスな部分は少々ある。
2016/01/10
matsu
本書のキーワードの一つである父殺しは重層的な構造を有している。ドストエフスキーには、実の父、神、皇帝、ヒョードル・カラマーゾフ、ステファン氏……、幾人もの「父」がいた。その死後も、父殺しと性欲を偏重したフロイトの影響が、烙印のように根強く残っている。そしてフロイトがそうであったように、父殺しは亀山氏の問題でもある。ドストエフスキーが本書の縦糸なら、横糸は「旅」であろう。旅は、親離れ、あるいはオイディプスの放浪のように、精神的な父殺しを暗示する。にも関わらず、著者の父についての描写はあまりにも少ない。
2015/02/08
ちゅーとろ
ドストエフスキー(罪と罰など)を読んだのは遥か昔の中学生の時。著者ははじめて読んでから翻訳し現地をたずね研究・検討をしてきた人。このくらい読まないと理解がふかまらないのか。ドスとエクスキーにもロシアにも文学・文化にも自分の知的生活にも刺激があったエッセイ集だった。
2023/01/13
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