幸せのプチ: 町の名は琥珀
幸せのプチ: 町の名は琥珀 / 感想・レビュー
utinopoti27
けして豊かとは言えなかったけれど、喜怒哀楽と暖かな人情があったあの頃・・。主な舞台は70~80年代、「琥珀」という名の東京の下町。本作は、この町に暮らす、あるいは暮らしていた人々の様々な人間模様を綴る短編集だ。それぞれの話をつなぐのは、プチと呼ばれた白い野良犬。登場人物たちに、ささやかな奇跡とほのかな幸せを運んでくれる不思議な犬なのだ。時の経過とともに時代の記憶は薄れてゆくけれど、「琥珀」に包まれた人々の思いは、当時の空気感そのままに、彼らの裡に留まり続けるのだろう。心のデトックスにおすすめしたい。
2021/05/03
紫 綺
ザ・昭和!!と云ってもいいくらい懐かしくも愛おしいエッセンスを盛り込みながら、琥珀という名の町を舞台にしたどこでも有りそうなエピソード。しかし、朱川さんにかかれば、深く郷愁を招き、涙を誘う感動作となる。オススメ!!
2017/07/04
ウッディ
都電が走る「琥珀」という名の下町、眼の病を患った恋人を見捨てた男が35年ぶりにこの街を訪れ、彼女との思い出を振り返り、その後を知る。昭和レトロの雰囲気の中で、紡がれた連作短編集。プチと名付けた犬の話、タマゴ小町とコロッケ・ジェーンの友情など温かい気持ちになれる話が多かった。学生時代を過ごした街を散歩した時に感じるノスタルジー、そこに生きる人々には、それぞれの人生があり、どこかで自分とつながっている、そんなことを思い出される一冊でした。
2017/11/26
KAZOO
朱川さんの昭和ものに属する連作短篇集です。「かたみ歌」「なごり歌」よりもミステリー度合いは薄くなっていて人の人情の方が多くなっています。より「三丁目の夕日」の方に近い感じです。6つの話が収められていて、「プチ」という名の白い犬がポイントとなっています。最初の話が最後の話にもつながっていて結構ほろりとさせてくれました。印象に残るのは皆さんも結構言っておられる「オリオン座の怪人」でしょうね。
2021/06/07
まこみん
昭和40年代の東京。都電の通る下町、琥珀。読みながら、通りの商店街の表紙絵に何度も見入ってしまう。朱川さんのノスタルジックな6話の白い物語に、ちょっとずつ姿を表す白い犬、プチ。其々の登場人物に寄り添って励ましたり、じゃれてみたり。「オリオン座の怪人」の一節。「人間はコップに過ぎない。そこにおいしい水が入るか、悪酔いさせる粗悪な酒が入るかは、全てコップの持ち主次第。」時が経ち、琥珀に住んだ人々は入れ替わり、昭和から平成になってスカイツリーが出来、姿を変えても下町琥珀は新たな人々を迎え、白犬プチもきっと今も。
2017/06/03
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