ある家族の会話
ある家族の会話 / 感想・レビュー
三平
須賀敦子さん訳ということで手に取った。 「なんというロバだ、お前は!」気に入らないことがあると怒鳴りつける気難しい父親。そんな夫を立てながらお茶目さを失わない母親。 そんなイタリアの家庭に生まれた著者が過ぎ去った家族の時間を追憶する。 ひとつの家族の物語であるとともに、ムッソリーニ政権下及びドイツの侵攻で反ファシストのユダヤ人がどのように生きてきたのかも記している。あくまで家族の物語という視点から逸脱しないで書いているのが味わいを出している作品。
2018/11/07
泉を乱す
傑作、須賀敦子が自ら文を書きたいとあこがれたのはきっとこの作品があったからだろうな
2022/05/06
いっこ
『わたしたちのすべての昨日』を読んだ時、その文章の印象を「訥々と」語っていると感じたが、こちらはなめらかに心に入ってきた。訳者が違うと、同じ作家の作品でも、こんなにも違うのか。『ある家族の会話』はナタリア自身の、その家族の一員にだけ通じる会話で紡がれた家族の歴史。何気ない口癖が時代を映し、激動の時代を生きた家族の個性を語る。オリヴェッティ社の「人間の顔を持つ資本主義」という企業精神を育てたアドリアーノ・オリヴェッティもこの家族と繋がっていた。『わたしたちのすべての昨日』の物語の源がここにあった。
2018/12/08
negi
須賀敦子訳。他人の夢と同じように家族の話も面白くないと思うのだが、これが面白いのでびっくりする。しかも誰ひとり共感できない。身近にいたら疲弊すること間違いなしの面々が揃っていて、つまり私を何一つ快くさせてはくれないのに楽しく読めてしまう。またファシズムの台頭という時代背景から想像される語り方とも違っており、その時代が過ぎた後にはあの頃は逮捕されてよかったみたいなことを言う。それも当事者のリアルなんだろうと思う一方、著者があちこちで伏せたものも感じた。どれほど深い苦しみだったかは『小さな徳』で少し語られる。
2022/06/03
...
家族を思い出した時、辛いことや楽しかったこといろいろあれど、最後には両親の笑顔が一番色濃く映るものなのだな。 読み難いわけではなかったのだけど、最後まで終えるのに時間がかかった。物語が長いわけでもない。直訳調だから、だろうか。
2015/12/05
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