王
王 / 感想・レビュー
syaori
アーサー王とその騎士様たちが第二次世界大戦を戦う物語。ヒトラーがいてチャーチルがいて空爆だってあるけれど、アーサー様たちは剣と鎧を捨てているわけでなく、ノリも感極まると気絶する騎士道物語のまま。時代が時代だけに、騎士と王妃のロマンスを謳うのは吟遊詩人ではなくラジオだし(ゴシップだし)、アーサー様は組合の賃上げ要求なんてものにもあってしまう、バカバカしくも楽しい一冊に! 同時に、王の内的混迷、消えてゆく騎士たちという物語を包む不穏で混沌とした雰囲気の効果もあって、一筋縄ではいかない印象の一冊でもありました。
2018/08/15
ヘラジカ
ポストモダン文学を代表する作家ドナルド・バーセルミの遺作。混沌とした表紙絵が内容をよく表している。「アーサー王と円卓騎士団、第2次世界大戦を戦う!?」というのが帯のキャッチコピーだが、このフレーズの最後の”?”が読者にとっては全てではないだろうか。確かに第二次大戦をアーサー王伝説の登場人物たちが戦っているのだが、単なる歴史改変ものやSFファンタジーではない。そこがポストモダン文学たる所以か。中々に物語を掴みにくい、奇書というに相応しい作品である。愉しい小説ではあるが、色んな意味でレベルの高い読書となった。
2015/07/02
まろすけ
アーサー王伝説を知らなかったのでウィキで付焼き刃しながら読書。偽りの聖杯(原爆)を騎士道に背くと放棄したアーサーも素敵だが、グウィネヴィアの人間臭くも真の王妃っぷりが好き「王妃は大理石のようなもの~純然たる象徴~でもその内面生活で、新たな神話をこしらえる~奥の深い豊饒な神話を」。洗練された皮肉とユーモアと感傷。バーセルミ、やはり稀有な作家と思う。柳瀬さん解説の比喩でいえば、紙と鉛筆で円周率の計算をやってるふつうの作家とバーセルミとの違い、か。本書でバーセルミ全読破。でも何冊かはいつか再読するな僕はきっと。
2019/01/14
mejiro
テンションの高さがおもしろかった。アーサー王とチャーチルが同じ時代に生きてるってすごい発想。伝説上の登場人物たちが現代的に振る舞って違和感ないのが可笑しい。
2015/02/02
三柴ゆよし
断片の積み重ねだから脳内補完が必要だし、その殆どが会話によって成り立ってるから好みは別れると思うが、自分は楽しめた。アーサー王伝説に明るければもっと楽しめたのだろうけど。登場人物が感極まるたびに気絶しまくるのには笑った。高橋源一郎『日本文学盛衰記』と読み比べてみると面白い。
2008/09/28
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