すべては消えゆく
すべては消えゆく / 感想・レビュー
早乙女まぶた
単に好みの問題だけれども、露骨に性的で暴力的な描写は期待していないので、過度にそういった描写がなくて良かった。演技としての言動を登場人物自身が自覚して積極的にそれを演じ続けていたにも関わらず、突如として劇から放り出された第一部終盤はかなり甘美な文学であり、続く第二部で描かれるすべてを失った彼の解脱的自由への過程もどこか羨ましく感じられるほどに魅惑的。マンディアルグの最後にふさわしい完成度の高い作品だった。
2013/08/11
渡邊利道
76年の長編。遺作。かなり不均衡な二部構成で、パリの街の記述が多くを占める冒頭から女との出会いまでがともかく素晴らしい。その後はいつもの、というかいつもよりもいっそう演劇的な会話とバロックな道具立てで、女優=娼婦による娼館=劇場での残酷劇的やりとりに明け暮れる。エロスとタナトスの遊戯的な交錯から死と再生の寓話的展開へと雪崩れ込むわけだが、最後のあっけらかんとした古代的世界の顕現あたりはいかにもマンディアルグ的軽さと幸福感に浸されている。ある意味フランスの階級的な堅牢さというものを感じたりもした。
2017/09/11
季奈
どこかペダンな雰囲気が漂う二人のヒロインとのダイアローグを中心としたマニエリスム的な物語。 サド侯爵夫人を仏訳した著者だけあり、三島氏の名が一瞬登場したりもする。 個人的な解釈を認めるとすると、両ヒロインとも女優的側面と娼婦的側面を持つことに気づく。 これは容易に読み取れるが、前者が後者の性質を内包していると料簡できる。 そしてメリエムが幼少から娼婦として営んできたことから女優は理性と言い換えられ、娼婦は本能と言え、対の関係となる。 相反するものでありながら、それを内包するアンビバレントな人の性質である。
2019/03/13
donau
只今個人的にフランス週間により
2011/02/01
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