奇蹟と愛と フランス中世文学集 4
奇蹟と愛と フランス中世文学集 4 / 感想・レビュー
syaori
『アーサー王の死』のみ再読。マロリーにはギリシア悲劇を思わせるようなエネルギーがありましたが、こちらは「美しくも妙なる唐草模様」とダンテが言うように人々の愛と友情と誇りとをより合わせて紡がれた絵巻物のよう。ランスロと王妃の恋により面目を潰された王がその怒りを後悔するころには弟たちを殺されたゴーヴァンの悲しみが悲劇を加速させ、止まらないその流れのなかで忠誠と愛とが絡み合い、ねじれ合い、モルドレの裏切りから父が子を、子が父を殺す破滅へとひた走るその軌跡はやるせなく、同時にうっとりするほど美しいと思います。
2017/11/04
syaori
本書の半分弱を占める『アーサー王の死』が印象的です。ランスロ=聖杯サイクル、「アーサー王の美しくも妙なる唐草模様」の掉尾を飾るこの作品で描かれるのは、栄華を極めた王国と円卓の崩壊。恋、忠誠、友情、骨肉の情、どれも美しく、美徳に繋がるもののはずなのに、この物語ではすべて破滅へと繋がる。その運命の女神の気紛れから逃れられない騎士たちは悲壮で、しかしそのために彼らの織り成す華麗で哀しい物語に魅了されました。そのほか兄妹、母息子の婚姻による二重の罪と贖罪を描く『教皇聖グレゴリウス伝』、『小樽の騎士』なども好き。
2017/08/15
ユーディット
解説書ではなく当時のフランス語文化圏で書かれたものの翻訳。ルネサンス以前は基本的に韻文で詩のような形式なので、日本語にするのは至難の技だと思うが、読みやすくできていて流石だと思った。音楽的な部分を感じ取るのは不可能にしても内容はかなり把握できる。「聖母マリアの道化師」
2015/03/20
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