カフカ小説全集 5
カフカ小説全集 5 / 感想・レビュー
踊る猫
息が詰まる。自分の中のわけのわからないものと格闘してそこから言葉を引きずり出そうと試みた。そんなカフカの孤独な戦いの記録がここにある。これは長続きしない、あらかじめ負けることが決まっているような戦いではあっただろう。事実、ここからなにか突破口が開ける予感がしないまま全ては中断され、尻切れトンボで終わっている。カフカはしかし諦めない。ノートにこれでもかと断片を書き記し、そこから途方もない傑作を引き出そうと孤軍奮闘している。だからここで読まれるカフカの姿はとても滑稽で悲しい。俗っぽさのない崇高な祈りが記される
2020/11/05
ドン•マルロー
創作の裏側を覗きこんでいるかのようだった。カフカは短編小説を「ちょうど画家がデッサンを描くような仕方で書いた」と何かの文章で読んだことがあるが、本書を読んで感じたのはむしろその逆のことだった。彼にとって文章を紡ぐことは自動筆記的な滑らかな作業とは程遠いもので、多くの作品を創出するに際し、逡巡に逡巡を重ねながらかなり呻吟していたのではないか、という印象である。そしてこのような断片的な文章でさえ、20世紀最大の作家のひとりと目される若者の恐ろしいまでの才気を感じさせられることは言うまでもない。
2020/05/06
Tonex
池内紀訳の「カフカ小説全集」シリーズの第5巻。カフカのノート、草稿、断片を第5巻、第6巻の2巻に分けて、そのままの形で収録。▼索引が無い。ある作品が草稿でどうなっているか調べようと思っても、どこに書いてあるかわからない。目次もあまり役に立たない。▼訳注も無い。第6巻の解説に《訳注はいっさいつけなかった。その覚悟で仕事にのぞんだ。》とあるが、どういう覚悟なのかよくわからない。せっかくの「批判版(新校訂版、手稿版)カフカ全集」の翻訳なのに、訳注が無ければ価値が半減すると思う
2016/01/08
かふ
忘れないうち『ある戦いの記録』の感想。カフカの初期に書かれた『ある戦いの記録』はカフカがドストエフスキーとかゴーゴリの影響を受けていることを感じさせる小説だ。厳冬のペテルブルグの幻想譚がプラハに語り継がれていく。その彼岸と此岸。三部に分かれている。第一部が語り手の男が友達とバーかパーティ会場を後にして散歩する。山に行こうと。友達にはアンナという女がいる。独身者である語り手は彼を守ろうとしている。酔っ払いのように二人で会話しながらやがて月夜を幻想的に泳いでいく男。そこで転倒する男。
2015/01/09
MatsumotoShuji
020511
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