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ユルスナール・セレクション 2

ユルスナール・セレクション 2

ユルスナール・セレクション 2

作家
ユルスナール
岩崎力
出版社
白水社
発売日
2001-06-01
ISBN
9784560047125
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ユルスナール・セレクション 2 / 感想・レビュー

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刳森伸一

読み応えのある重厚な小説だった。医師でもあり錬金術師でもあるゼノンの生涯を軸に、人間とは何か生きるとは何かを問い直しているのだろうけど、象徴的であることを恐れない文章や会話、多面的な物語、状況説明を排したような独特の語りなどが難解で、十分に理解できたとはいえない。それでも、圧倒され、読後に魂が揺すぶられたような感覚が残る。傑作かもしれない。

2016/10/08

せがた三四郎

ユルスナールが生涯をかけた著作はハドリアヌス帝の回想と黒の過程が挙げられる。前者が明朗さ、明晰さを備えているのに対し、この作品は混迷、暗さが全編に漂っている。ユルスナールによって完全な人格を与えられた主人公ゼノンは宗教改革の嵐が吹き荒れる16世紀を放浪する。医師、錬金術師、修道士であるゼノンの、苦悩する魂の物語。ハドリアヌス帝の回想にも似たシーンがあるが、「砂丘の散歩」の章が非常に美しい。

2011/03/08

よっし~

中世の錬金術師が主人公。「黒の過程」は、非金を金に換える錬金術の過程の一つ(=ニグレド)。すなわち人間の魂の変質を描く物語であり宗教・哲学・科学が重層的に絡まりあい、輻輳し、いくつもの化学変化が同時に影響しあいながら生起する、一筋縄ではいかない小説である。中世を扱った佐藤亜紀の傑作『鏡の影』や平野啓一郎『日蝕』が好きな向きにはおすすめ且つ決定版ともいえる一冊。

kuppy

この作品の翻訳は大変なんだろうと感じた。皇帝と教皇の対立、宗教裁判の激しさ、その中で背教の哲学者としての壮絶な最期と重厚に紡がれていきます。何とも表現しようのない、読むものに知識と覚悟が必要な本ですね。

2016/01/04

cue.1

◎−宗教改革の争乱を背景に、宗教史や哲学史に記録されない人々の思想と無思想が揺らぐ地図を辿っていくと、その風力に撓み捩れ巻き込む主人公となる。逆に主人公の母を辿ると、聖者や王族の後ろ姿となる。この独特の叙述と構成で、集合的な意識の細部で運動する個人、皮膚の境界や名前に限定しない個人、科学や書物や地動説また近代政治をよりどころにする現代人の祖となる精神、それら総体の物語に直面している私の現実をも巻き込んでしまう。歴史に連なる死と再生の事象が、“二十相の鏡”と“球体の虫”の視座で無限に拡散され、

2015/02/21

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