雪白姫 (白水Uブックス 112 海外小説の誘惑)
雪白姫 (白水Uブックス 112 海外小説の誘惑) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
ワオー、これは最高!私の最も好きなタイプの小説だった。雪白姫と7人の男たちが引き起こす大騒動。とは言っても、一貫したプロットがあるわけではなく、読者の前に差し出されるのは、シュールでぶっ飛んだ短編のコラージュ。何を言いたいかさっぱり分からないところも多い。それでも「詩はぼくらの間で、脱線転覆した巨大な鉄道列車みたいに存在していた」のような突拍子もない文章が続いていくので、どうしても読み続けたくなる。この小説が意味しているところは、としたり顔で論じたら、作者はくすぐったい顔をするだけだろう。→
2017/02/15
キャンダシー
文学作品に解釈や造形を持ち込めば、直ちにお終いの気配が漂う。バーセルミの夢でも現実でもないハイパーリアリティの世界は、天才を自称するうち、いつのまにか天才になっていたという荒木経惟が、使い捨てカメラで撮るアメリカの奇蹟、ボードリヤールの「猥褻がもたらす奇蹟」の象徴、反芸術に仕立て上げたドル紙幣のような雪白姫の黒檀の美しい黒髪と、複製されたウォーホルの「トリプル・エルヴィス」の神話的スナップショットの数々に、バーセルミは無機質なものを際限なくコピーし続ける、現代世界の仕組みそのものを鮮やかに表現してみせた。
2020/09/21
いちろく
白雪姫ではなく雪白姫。7人の小人ではなく7人の恋人たちと繰り広げる大騒動。童話という題材を選択した寄りも、童話を利用して当時の世相や著者の主張を語る捌け口とした、とも受け取れた内容。作中にアンケートが挿入されていたりと明らかなメタ要素を狙っている部分も作為的。意図的にハードルを設けている所が、好きな人には堪らないし、苦手と感じる人には不快感を誘う。あらすじで、前衛ファンタジーと評されるのも納得。最後に一言、やれやれ。
2019/02/17
田氏
ドナルド・バーセルミの名前は知っていた。姉が「死父」を愛読していたからだ。わたしの知り得る唯一のポストモダン!諧謔と韜晦、減法による加法、鑿で輪郭を与えられた彫像、言葉のサラダ。無知ゆえに発言は許されないので、行動と行動主体の誤りを挙げ連ねる。図書館の期限に追われて読んだこと。3回読み返さなかったこと。人間には肩が二組あるべきであること。もしくは三組。意味を見出したこと。解釈したこと。ポストモダンの知識の欠如。感想欄における前衛性文体の模倣。模倣にもならない駄文 新ジャンルの開拓 5月からは求職 やれやれ
2018/03/22
乙郎さん
理解できない本というのは恥ずかしながらたくさんあるのだけれど、理解できないながらに読んでいて面白い本というのは珍しい。思うに、雪白姫たちのストーリーが断片的に提示されていて、きっとそれをつなぐ方法があると思うのだが、それがわからない。それでも面白いのは乾いた文体やこじゃれた表現があるからだ。
2009/08/07
感想・レビューをもっと見る