逆さまゲーム (白水Uブックス 125 海外小説の誘惑)
逆さまゲーム (白水Uブックス 125 海外小説の誘惑) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
ミステリー調に展開しながら過去の余韻に漂う表題作の雰囲気は中々である。後の『イザベラ』などの骨子になったのかな。「カサブランカからの手紙」はぼくとわたしが交互になり、誰が主体となって語っているのかが分からなくなる程。「ドロレス・イバルーリは苦い涙を流して」の語り手の他人事とは思えない哀しみと悔いに打拉がれてしまう。個人的に「土曜日の午後」が一番、好き。マザコンな腕白坊やが母親の「女」としての一面を知り、自分は孤独だと知ってしまった時の甘やかな苦味は中毒性がある
2018/07/27
コットン
初期短編集。読者に分かりやすいようにではなく、故意に何かを隠すことによってより作品の奥行が反映されるような手法がすごい。
2014/03/13
どんぐり
タブッキの短編集。須賀敦子があとがきで書いている『逆さまゲーム』は「反対側からものを見ようとする」人たち(国境の反対側も含まれる)のことだが、読解力がないせいか、読んでも全然頭に入ってこない。なんとなくストーリーを追えたのが、「空色の楽園」のみ。これは読書を嫌いにさせる体験だ。たまにはこういうこともあるさ。
2019/03/19
zirou1984
逆さまになった自分、反対側のわたしを想像できるだろうか。こうはならなかったであろう自分、性別を異とするわたし、内臓がひっくり返ったこの身。自分の向こう側に橋をかけることで、隠されたもの、表からでは見えなかった輪郭に僅かながら触れられる。届かないものの感触を味わいながら、本当に曖昧なのはこちらだったのだと気付かさせられるのだ。表題作を含む頭2作と川端康成について「たましいの野原をやさしく撫でる、あるかないかのそよぎ」と評する「空色の楽園」が特に好み。タブッキもまた、そよぎなのだと感じられる初期短編集。
2016/06/21
U
「逆さまゲーム」と「カサブランカからの手紙」を。いずれも一度では入ってこず、よみ返しましたが、うーん。正直、もやあとした気持ちがのこる(苦笑)。この感覚が、タブッキの魅力でもあるのかな。状況がストレートに語られることなく、終盤夜は明けそうになるけど、結局明けない、みたいな。ある意味その絶妙な具合が本作の持ち味で、タブッキにひかれた須賀さんが目指そうとした表現だったのかも。なんて都合のいいように解釈してみる(苦笑)。時間をおき再読したい作品です。
2015/09/06
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