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最後の物たちの国で (白水Uブックス 131 海外小説の誘惑)

最後の物たちの国で (白水Uブックス 131 海外小説の誘惑)

最後の物たちの国で (白水Uブックス 131 海外小説の誘惑)

作家
ポール・オースター
Paul Auster
柴田元幸
出版社
白水社
発売日
1999-07-01
ISBN
9784560071311
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最後の物たちの国で (白水Uブックス 131 海外小説の誘惑) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

秋の夜に柴田元幸訳のオースターを読む。まさに至福の時間だ。そして、読了後は、しばし痺れるような余韻に包まれる。これは閉ざされた世界の閉ざされた物語だ。アンナのいる世界は極度に閉ざされていて、どこへも通路を持たない。たった1ヵ所だけかすかに通じているのが、「あなた」に託された、まさにこの手紙であり、読者である「私」が受けとめるのだ。そうしてみると、この小説は極めてintimateな語りとして響いてくることになる。もう失うものなど何もない荒廃した場所から、かそけき命の温かさを持った囁きが紡ぐ世界がこの小説だ。

2015/11/24

まふ

ゴミ、死体などを「最後の物たちです」と語るアンナの手紙で始まる幻想物語。アンナは街で怪我をしたイザベルを助けるがその夫のファーディナンドに強姦されそうになって殺し、図書館に逃げ込みそこで生活しているうちに人肉屠殺されそうになり、逃げてケアハウスで過ごす。そのケアハウスもつぶれて外に放りだされる…。現実味がなさそうで、ありそうで、ズルズルと作者の世界に引き込まれてしまう。まことに不思議な読書体験をさせていただいた。G1000。

2023/08/19

ケイ

生活に必要なものが一つずつ失われていく国。人は自分の財産を食いつぶして暮らす。それが無くなれば、落ちたものを拾い、糞便でも死体でも再利用して生きていく。とても消極的な生き方に落ち着いていくと、記憶も欲も抜け落ちていく。その世界を出れば普通の生活があることがわかっているのに、入ると出られない世界。そういった中でも思いやりも愛情も生まれる。このような生活が営まれている国があるように思えて、その希望のなさと閉塞感に苦しくなる。

2015/12/14

sin

作者には彼女の声がずっと前から聴こえていたという。その国の人々が失ってしまった物はなんだろう?少なくとも愛という自己欺瞞ではない。他人を尊重する事なのだろう…いや彼らなら声高に自警団の必要性を主張するのだろう!そう、物語と同じく自国を壁で囲もうとしているプレジデントを要した彼らなら?そこに作者の憂いを感じるのは穿ちすぎだろうか?◆英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊を読破しよう!http://bookmeter.com/c/334878

2016/12/14

扉のこちら側

2016年278冊め。【165/G1000】無政府状態の街は、出口のない荒廃に向かってその歩みを止めることはない。停滞はしない、続く荒廃。彼女は兄を見つけ次第ここから抜け出させると思っていた。書かれているエピソードは、訳者のあとがきによれば時間と場所を異にしているが、すでにこの現実世界で起きたことであると著者は明言しているという。読む者の中にはこの世界が、新しい世界として刻まれる。

2016/04/29

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