カモメに飛ぶことを教えた猫 (白水Uブックス)
カモメに飛ぶことを教えた猫 (白水Uブックス) / 感想・レビュー
やすらぎ
3つの大切な約束をした誇り高き黒猫ゾルバとカモメの物語。その願いを叶えるにはどうしたらいいのだろう。努力すれば何でも出来るようになると聞くけど、特殊な能力がなければ無理なこともあるし、生きていくためにそれは本当に必要なことなのかな。あの約束がぼくの迷う気持ちを強くする。どんなことがあってもきみを守らなければいけない、その思いに紡がれていく。失敗の数だけ成功の喜びは熱くなる。信頼が深まるほど寄り添い見つめていたくなる。愛の贈りものは羽ばたいていく。今宵の空のすべてはフォルトゥナータ、きみのためのものだった。
2023/05/25
のっち♬
ハンブルクの港街で、瀕死のカモメにひなを育てて飛ぶことを教えることを約束した黒猫。物語は仲間の猫たちとの軽妙な会話を中心にテンポ良く進行する。大佐やら博士やら呼び名に対して頼りない彼らは、ひなが自発的に空を飛びたくなるまで静かに温かな愛情を注ぐ。この「まったく異なる者どうしの愛」を訴えるメッセージは著者の苦難の人生と照らし合わせると重みがある。オチはタイトルからすると意外だが、詩人にも彼の影を感じずにはいられない。「飛ぶことができるのは、心の底からそうしたいと思った者が、全力で挑戦したいと思った時だけだ」
2022/01/14
麦ちゃんの下僕
オーディオブック。ある日、ハンブルクに住む太った黒い猫「ゾルバ」の家に、原油の波に呑まれて瀕死のカモメ「ケンガー」が墜落してきた。死の間際に1個の卵を産み落としたケンガーは、ゾルバに3つの約束を誓わせて卵を託す。ゾルバは猫の仲間たちと共に「フォルトゥナータ」と名付けられたひなを育てていく…という物語。終盤の展開(○○に助力を求めること)は腑に落ちませんが(苦笑)…ゾルバ&フォルトゥナータ&仲間たちの“絆”は本当に素敵でしたね。環境問題や動物虐待、多様性の問題etc…メッセージ性の強い作品でもありました。
2022/02/24
こーた
ファインディング・フォルトゥナータ。群れからはぐれた親鳥は、生まれてくる雛を猫に託す。ひとたび交わした約束は必ず守る。それが港町に暮らす猫の掟だ。奇妙な仲間たちに愛情を注がれたカモメは、すくすくと成長するが、空の飛びかただけは、どうしたって猫にはわからない。難問を解くべく、猫たちはタブーを破って詩人のもとへ。唯一飛びかたを知っているのが詩人とは、なんて最高なんだ!愛らしく平易な物語のなかに、差別や環境汚染といった人間の問題も巧みに孕む。雛カモメの名は幸運という意味。愛で育んだ幸運が、大空を羽ばたいてゆく。
2017/09/20
アン
ハンブルクを舞台に、カモメと猫の心あたたまる交流を描いた物語。瀕死のカモメと3つの約束をした黒猫ゾルバ。ゾルバは誇り高き仲間たちと共に、その約束を果たそうと奮闘し始めます。劇団四季のミュージカルにもなり、心に響く様々なメッセージが込められています。人間がもたらした災難…。知恵を絞り、協力して問題を解決しようとする猫たちが魅力的です。「きみのおかげでぼくたちは、自分とは違っている者を認め、尊重し、愛することを、知ったんだ。」成長を見守ることや勇気を持って挑戦することの大切さをそっと教えてくれる一冊です。
2019/10/04
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