流刑地にて (白水Uブックス 156 カフカ・コレクション)
流刑地にて (白水Uブックス 156 カフカ・コレクション) / 感想・レビュー
ころこ
『流刑地にて』カフカには確か、人間の贖罪的な近代意識が後から裁判を意味づける寓話がありました。本作は、近代的産物である機械が被告の身体に判決を刻み込むことによって、罪状、判決内容、そもそも裁判に掛けられるか否か、もっと言えば罪を犯したか否かが死刑と共に事後的に判明することになります。裁判の無根拠さだけでなく、審級の不在がこの後の大量死にまつわる出来事を想起させると考えるのは容易いですが、反面で何か深さに欠けるとの印象を持つことは反倫理的でしょうか。
2020/07/05
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
ナチスが台頭を始めた時代、ユダヤ人の作家フランツ・カフカは、既に41歳の若さで世を去っていた。代表作『変身』が出版されていたものの、ユダヤ人排斥の流れの中、大半の作品はノートに残され、『発見』される日を待っていた。 本書は終戦直後、世界各国で翻訳された全集から採られた4篇を収録。誰かの悪夢を覗いているようなざわざわした読後感が味わえる。幻想的な作風にあって、表題作に出てくる『死刑執行マシン』の描写がリアルで怖い。白水Uブックスの翻訳は平易に描かれているので、今まで躊躇していた作品も手に取りやすい。
こうすけ
はまりつつあるカフカ。『火夫』が面白かったので『失踪者』が読みたくなった。また、評判の『判決』『流刑地にて』よりも、『観察』の、孤独を描く短文集が好き。
2022/03/26
KI
伝統が古ぼけてしまったら、それはもはやがらくたなのかもしれない。
2019/08/11
ぞしま
「判決」……爽やかな始まりから一変し不穏な流れに。記号化された人間、訳の分からない(他人の)所作や世の機構、尊大で公正な青年、欠落した心理描写……一読してカフカだと思う。また帰ってきたか、という既視感。帰省の慰みとしてたまたま手にしただけだが、なぜ手にすべき書物としてカフカを選んだか分からない……。読中そんな気になるが、気づけば引き込まれている。「流刑地」も期待通りのカフカ。これまで自分が読んできたものと照らしてみるに、総じてカフカの物語には終わりがないようだ。
2017/08/15
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