ノート〈1〉万里の長城―カフカ・コレクション (白水uブックス)
ノート〈1〉万里の長城―カフカ・コレクション (白水uブックス) / 感想・レビュー
ぞしま
いくつもの(中断)という二文字が印象的だ。短篇として独立されて箇所もあったと気づいたり、本書は試作的断片とも読めるだろう。本人の意思は?と問われれば「焼いてくれ」とブロートに宛てた言が本心なのかどうなのかも分からないのだから推して(そして)思い込んで読むより仕様がない。中断がカフカの小説の魅力を形成しているのではないか?こんなことを言うと怒られてしまうだろうか。いつまでも辿り着けない城も終わりのない城壁の作成も、カフカの小説そのままじゃないかと思う。同時に魅力の一部でしかないとも。色々考えてしまう。良書。
2019/01/17
王天上
「ある戦いの記録」の読んだことのないバージョンが収録されていて、これがとてもグッときました。短篇ではこの作品が一番好きだなあ。あとお父さんに死刑宣告されるやつとか。
2013/07/13
Tonex
カフカ生前には発表されなかった短篇16篇を収録。もともとノートに手書きでぐしゃぐしゃと書かれたメモ書きや下書きのようなものだったはずなのに、活字に起こされてタイトルがつけられると、ちゃんとした一つの作品に見えてしまう。でも、本当はそういう完成品ではない。表題作「万里の長城」をはじめ「狩人グラフス」「こうのとり」など他の本で読んだことのある作品がいくつか収録されているが、それで完結していると思っていた作品が、実は執筆途中で中断されたものだったことを知って驚いた。
2015/11/03
ちあき
マックス・ブロートの編集が加わらないバージョン(手稿版)にもとづいた池内訳の、真骨頂ともいえる巻。文章自体もそうだが、随所にあらわれる「中断」が読み手の意識に引っかかってくる。日本語におきかえられているのに、カフカがついさっきまで書いていたかのような感触もある。「工区分割方式」が記憶に残る表題作は、各段落を切りきざんで順序・回数に頓着せず何度も読みかえしていくとさらに味わい深いことを発見した。
2009/10/22
みやったー
表題作はカフカ的世界観で描かれる中国ということで、読み始めるまでは内容の想像がつかなかったが、よく考えればカフカの世界では全貌の掴めないグレートウォールに行く手を阻まれ、裾野の見えない官僚機構に捕らわれている人はたくさん登場するので、扱うモチーフとしてはごく自然なのだと納得した。
2018/01/14
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