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ウッツ男爵: ある蒐集家の物語 (白水Uブックス 193 海外小説永遠の本棚)

ウッツ男爵: ある蒐集家の物語 (白水Uブックス 193 海外小説永遠の本棚)

ウッツ男爵: ある蒐集家の物語 (白水Uブックス 193 海外小説永遠の本棚)

作家
ブルース チャトウィン
Bruce Chatwin
池内紀
出版社
白水社
発売日
2014-09-04
ISBN
9784560071939
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ウッツ男爵: ある蒐集家の物語 (白水Uブックス 193 海外小説永遠の本棚) / 感想・レビュー

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nobi

“ウッツ”には「かんばしからぬ意味合いがある」らしいし語感も鬱(ウツ)が吃逆するようではある。ドレスデンに別邸を持つザクセンの小地主の家系。ユダヤ人の祖母の館にあった陶工ケンドラーの道化師が少年を魅了する。「戦争、大弾圧、革命、この三つ」のチャンスを生かす才覚は祖母譲り。“プラハの春”前後の抑圧はマイセン磁器蒐集家にとっても如何ともしがたいが陰鬱に終始しない。妄想を伴う滑稽さがあり、男に仕えるマルタ、ハエ蒐集家が物語を厚くする。小編成ながらプルチネルラのように軽妙で鮮やかな各楽章。何より彼らの気概がいい。

2018/01/20

こばまり

警察国家でマイセン磁器を蒐集する貴族。何重にも囚われ人で胸苦しくすらなります。が、斯くも祝福された人生よと天晴れな気持ちに。結末に不満な方もいらっしゃるようですが、私はコレクターは傲慢で構わないと思います。そのモノに人生を捧げた人だもの。大作『パタゴニア』の時は上等な赤ワインを大樽一杯飲み干した様な読了感でしたが、本作は上等なベルガモットをグラス一杯くいっと飲み干した様な。いずれにせよ酔いました。

2015/01/07

星落秋風五丈原

チェコの首都プラハに「現代のルドルフ」と呼ばれるウッツがいた。ルドルフに擬せられるくらいだから、彼もどこか変なのだ。副題は彼のことであり、本書はマイセン磁器に耽溺する彼の一代記だ。但し、時系列通りになっていない。構成自体が迷路のようだ。それでもややこしく感じないのは訳者の使う言葉がとても柔らかく、とっつきやすいからだ。他のレビュアーも書かれているけれどチャトウィン作品で一番読みやすかった。強国ロシアの隣でじっと時期を待ち、したたかに、しなやかに、ブロード革命を成し遂げたチェコの国民性の一端を見た気がした。

2018/09/18

藤月はな(灯れ松明の火)

陶磁器蒐集家を巡る物語と謎。そしてこの物語は、多くの物語にある「物は儚いが人との絆は永遠だ」ということを題材にした話では決してない。寧ろ、コレクションで得られる恍惚の一瞬を切り取っていっている。第二次世界大戦で焦土と化したプラハでも彼のコレクションは喪われ、冷戦時でも国から国を渡ってのコレクション集めが困難になってしまった。それでも彼はマイセン磁器をコツコツと蒐集していく。だんだん、コレクション愛が大海程の存在感である男爵が可愛く、思えてくるから不思議。だからこそ、マルタさんは最後まで付いていったのかな。

2014/09/23

やまはるか

作品の少ない作家なので、この本は読んでいると思いながら、確信はなく読み進めた。美術品の競売会社サザーヒス勤務の経験を生かした作品。私が陶磁器蒐集家ウッツ男爵の死後、生前に自宅で目にした夥しい美術品の行方を追う。行方が明らかになる終盤で読んだと確信した。プラハの春と言われる時代、無機質な男たちが高価な陶磁器に群がる。『「オルガンが奏けるかね?」「いや、奏けない」トオルリークは答えた。「俺もダメなんだな」男はそういうなり横手の通りに消えた。』チャトウィンらしい粘着性のない文体、池内氏の訳が光る。

2024/10/04

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