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不在の騎士 (白水Uブックス)

不在の騎士 (白水Uブックス)

不在の騎士 (白水Uブックス)

作家
イタロ・カルヴィーノ
米川良夫
出版社
白水社
発売日
2017-03-16
ISBN
9784560072103
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不在の騎士 (白水Uブックス) / 感想・レビュー

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おかじ

空っぽの鎧に魂が宿り、物語を動かしていくアイロニカルな痛快さ、ところどころに顔を覗かせる「書き手」の葛藤、曲者揃いの登場人物たちが織りなす群像疾走(失踪)劇は、何を措いても、楽しいに尽きる。滑稽さとシリアスがオセロの駒のように並べられ、カリカチュアのごとく、流れるように完成する物語の手際はまるで奇術だ。カルヴィーノの他の作品も読み進めてみたい。

2024/06/14

かとめくん

騎士道華やかなりし中世フランス。白銀に輝く甲冑の主は高潔な騎士で、その潔癖さから尊敬を受けるとともに、うっとおしがられてもいた。その甲冑の中身は実は空っぽ。存在はするが実体はないこの騎士を廻り、実体として存在しながら自らの存在を正確に把握できていない従者がついてその極端な対比をみつつ全体が物語として語られるというメタ構造も持った構成になっている。と思ったら最後にその部分もひっくり返る。人間の本質とは、と問いただされているようでもあり、茶化されているようでもある。カルヴィーノ面白い。

2020/03/16

りんたろう

★★★★

2017/09/22

メセニ

磨き上げられた鎧の中は”空”。しかしその確固たる騎士道精神を象ったような”不在の象徴”アジルールフォ。対照的に従者グルドゥルーは、存在はするが何者でもない不確かな存在。対をなす者として、どこまでもプリミティブで、子供のような大人として描かれる。不思議な感覚に嵌まり込むのは、この対をなす存在の両方に自分自身を発見してしまうことだ。ある種の鎧を纏い生きる自分と、生身の時の自分。どちらも仮初めで不完全ではあるが、どちらも自分に違いない。存在をめぐる哲学的な思索ではあるが、”お堅さ”はない。風変わりでユーモラス。

2017/04/03

spica015

鎧の中身が空っぽの騎士をはじめとして、登場人物の誰もが人を食ったようなキャラなのに、本人たちは至って大真面目だから面白い。中世を舞台に騎士の遍歴の旅は次から次へと事件を呼び、それが物語という枠を飛び越えて読者を不思議の世界に誘う。ドタバタ喜劇で総じて滑稽ではあるが、騎士が空っぽの存在であることや若者たちの浅はかな振る舞いに気付くとちょっと虚しく感じる時もある。なかなか形容し難い魅力ではあるが、こういう物語を構築することができる作者がただただ凄い。

2017/07/07

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