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木のぼり男爵 (白水Uブックス)

木のぼり男爵 (白水Uブックス)

木のぼり男爵 (白水Uブックス)

作家
イタロ・カルヴィーノ
米川良夫
出版社
白水社
発売日
2018-01-25
ISBN
9784560072110
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木のぼり男爵 (白水Uブックス) / 感想・レビュー

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まふ

1767年のイタリア。姉の作ったカタツムリ料理を拒んで木に登って再び地上に戻ることのなかった男爵家の長男コジモの一生を弟の立場から記録した物語。最初は面白半分、だんだん本格的になって恋も勉強も戦いも樹上で済ませる。過去の伝説、おとぎ話、民話などを集めて再構成したのかもしれない。中でも稀代の悪党「荒ら草ジャン」を高級な読書家に育て上げたりする奇抜なアイデアが光る。また、あれほどカッコよかったコジモが老衰でしょぼくれて死んでゆくおわり方も人間らしくて作者の冷静な設定に納得した。G1000。

2023/06/12

しろうさぎ

荒唐無稽な逸話が次々繰り広げられる、男爵コジモの一代記。「最期まで木の上から降りなかった」彼は結局何者だったのだろう。高みから俯瞰して、世間と関わった型破りな英雄?地に足をつけて大人になることを、生涯拒否し続けた少年?どちらにも取れるが、つまらない現実の枠組みから飛び出す「物語の楽しさ」を、存分に提供してくれた人ということで良しとしよう。

2024/05/26

kuukazoo

18世紀イタリアがイタリアですらなかった頃、男爵の長男コジモは12歳の時に姉の作ったかたつむり料理を拒否して木に登って以来樹の上で生活するようになる。バッティスタ姉様のガストロノミーと呼ぶにはあまりな料理の破壊力。樹から樹を伝って移動し枝の間に生活空間を作り樹の上から人と関わるコジモの人生。こんなやり方で人の世界を脱け、距離をとりつつ関わるという発想が面白く(また寓意的に興味深く)、森や樹の上の世界の描写が素敵だった。語り手の弟による物語の閉じ方が悲しくも美しく印象に残る。

2022/11/20

saeta

カタツムリ料理を拒否し、終生樹の上での暮らしを選んだ少年の一代記である荒唐無稽な着想の作品。このまま樹上暮らしの世捨て人間にでもなって行くかと思いきや、様々な人とのポシティブな交流で成長し、果ては革命や戦争で重要人物にも。しかし、野生化した動物を臆面も無く捕らえるなど、12歳の子供にしては随分サバイバル能力に長けているなと驚いたが。寓話でもありファンタジー的要素もあるので、極端なCGを駆使しなくとも映像化出来そうな作品だが、過去に試みた人はいないのだろうか。

2024/02/20

Inzaghico (Etsuko Oshita)

彼を見守る、もしくは彼と交友関係を結ぶ人物がそれぞれ強烈だ。母上はドイツ軍人の娘なのだが、父上よりも早く、深く息子を理解し、二度と地上に降りてこいと言わなかった。樹上の息子と小旗信号を交わしたあとは、あるがままの息子を認め、それは一生涯変わらなかった。また、山賊と仲良くなり、この山賊が主人公の勧めで読書に目覚め真人間になるエピソードが印象深い。昔の仲間に手伝いを強制されて捕まってしまい、それまでの罪もあって死刑を宣告される。その死に際が潔いのだ。

2020/01/21

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