フラッシュ:或る伝記 (白水Uブックス)
フラッシュ:或る伝記 (白水Uブックス) / 感想・レビュー
ケイトKATE
実在した詩人エリザベス・ブラウニングの飼い犬フラッシュを主人公にした小説。ヴァージニア・ウルフの小説では、前衛的な『波』の後に発表されたものだが、『波』に比べると非常に読みやすいし、タイプとしてページの間にウルフの姉ヴァネッサの挿絵が挿入されて、『オーランドー』に近いゆわゆるユーモア小説である。ウルフの小説を読むとジェンダーの問題が提起されているが、『フラッシュ』は人間中心主義への批判が込められていると深読みしてしまうが、私は単純に可愛い小説として読んだ。
2024/01/06
かもめ通信
コッカー・スパニエルのフラッシュからみた詩人エリザベス・バレットの半生であると同時に、フラッシュ自身の伝記でもあるユニークで可愛くてどこか切ない物語。犬のフラッシュ自身も様々な経験を積んで視野を広げていくところも興味深い。なるほどこれは、フラッシュのことを描いているようにみせてエリザベスの、エリザベスのことを描いているようでフラッシュのことを描いていたりするんだな。きっと。それにしてもウルフ、こんな物語も書いていたんだなあ。
2020/06/14
みねたか@
これもウルフなんだ。「オーランド」と「灯台へ」のふり幅を思えば犬を語り手としたからって驚くにはあたらない。太陽と草原、野兎を追うことを愛するスパニエル。しかし主人への忠誠を誓う彼フラッシュは病身の主人の傍を離れない。洞察力に優れる彼は主人の些細な変化も見逃さない。恋に落ちる主人、そして駆け落ちの準備をする主人。その様子を見守る彼の不安と緊張。犬と共に過ごした経験がない私にも、その姿がありありと、生き生きと伝わってくる。そして、彼らと過ごすということは別れが必ず訪れるということも改めて実感する。
2022/12/19
29square
推し作家ウルフの作品なので一気読み。 あの大傑作「波」の片手間に書かれたとは思えないくらい良質な(カワイイ)作品。主人公は犬だけど、言葉を持たなくてもこんなに饒舌になれるのはウルフ必殺技の“意識の流れ“技法のおかげ。楽しい!嬉しい!悲しい!怖い!そしてご主人ダイスキ!。人間関係や社会規範が拘束具そのものになるのは人も一緒、軽く読めるけど割と深いかもしれない。
2023/12/03
ふるい
詩人エリザベス・バレット・ブラウニングの生活が、飼い犬フラッシュの視点から描かれる。ウルフ作品の中でも、楽しく読みやすい一冊だと思う。詩人は言葉でもって世界を表現し、犬であるフラッシュは自分を取り巻く世界を体全体で感じ取り、喜びや悲しみを主人に寄り添いながら学んでいく。生きる喜びに満たされているように、ロンドンやフィレンツェの街を駆け抜けるフラッシュのことが、たまらなく愛おしくなる。
2022/09/27
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